4-29 ハジマリ高校演劇部
私は大黒雄斗次郎。40代のオッサンだ。私は今、若者に囲まれて、高校生活をエンジョイしている真っ最中である。
1)オトジ入学
若い頃色々あって高校を中退。社会に揉まれながらも必死に生きてきたが、不況のせいでリストラの憂き目に遭い、晴れて無職となってしまう。新たな職を探すために久々に履歴書を書いていると、自分が中卒であるという現実を突き付けられ、猛烈に凹んでしまった。
その夜、酒を溺れるほど呑んで、ふて寝しながら想いにふける。私の人生とは何だったのだろう……。嫁も取らず、子供も無く、ただひたむきに働くだけだった。散々会社に尽くしてきたのにあっさり捨てられてしまった。再就職しようにも中卒では……。
そうだ! だったら高校に入り直せばいいじゃないか!
幸い独り身で浪費癖もなかったので、蓄えはそれなりにある。退職金も少しはもらえた。3年間くらいなら働かなくても何とかなる。
こうして私は、私立ハジマリ高等学校に入学したのだった。
2)弁財天美と演劇部と
入学して間もなく、私は不思議な少女と出会う。たまたま教室の席が隣だったことで知り合った、その少女の名は弁財天美。名前も、容姿も、そして性格も、かつての幼なじみとそっくりだったのだ。だけどそれは20年以上前の話だ。同一人物のはずがない。私の知っている幼なじみの天美は、交通事故で死んでしまったのだから……。
そんなもう一人の弁財天美は、幽霊部員ばかりで休止状態の演劇部に入部すると、「一緒に演劇しよっ♪」とクラスメイトを勧誘するが、誰もやりたがらない。スポットライトが当たるような活動が苦手なので、私も一度は断ったのだが、独りで落ち込んでいる天美が放っておけず、私は入部を決意する。その時の天美の笑顔が忘れられない。何も泣くことはないだろ?
二人きりの部活動も悪くはなかったが、やはり部員は必要だ。来週からは頑張って勧誘するぞ!
3)演劇部の仲間達
春風花菜はクラスメイトの一年生。元気いっぱいの彼女はいつも元気を持て余していたが、同時にいつもお腹を空かしていた。部活に出た日は購買部の焼きそばパンをおごると約束したら、あっさり入部してくれた。そのために花菜に目を付けていた陸上部との軋轢を生んでしまったが、妥協案として花菜が助っ人として陸上大会に参加することで和解する。
王宮炎邪は二年生。毎晩喧嘩に明け暮れる一匹狼の不良少年だ。たった一人で不良グループを壊滅させたとか、ドスやチャカで武装したヤクザと渡り合ったとか、様々な武勇伝を残している。そのわりに一年留年した程度で済んでいるのはハジマリ高校の七不思議の一つである。演劇部には入部した初日に一度来たきりの幽霊部員で、天美が入部するまでは唯一の演劇部部員だったので一応部長である。ちょうど喧嘩三昧の毎日に嫌気が差していた炎邪は、天美の説得に応じて部活動に復帰。目下、一般人のふりをするため演技力を磨いている。
唯神奈里紗は三年生。バリバリのスケバンである。あからさますぎて、実は潜入捜査している学生刑事なのではないかと疑うが、ヨーヨーは持ってない。実は炎邪にほの字で、側にいたい一心で演劇部に入部する。ちなみに教会に住んでいて父親は牧師である。
転校してきた巫姫慈麻里は今年13歳の天才少女。小学校を卒業後、中学を飛び越して高校に入学した。実は天美の姪。二つ返事で演劇部に入部した慈麻里ちゃんは、事ある毎に私と天美をくっつけさせようと画策する。どうやら天美の秘密を知っているようだが……
4)ああ無情
演劇部は文化祭での発表を目指し、本格的に動き始める。演目は『ジャン・バルジャンとコゼット』。不朽の名作『レ・ミゼラブル』を題材にした、弁財天美のオリジナルシナリオだ。
だけど良い事は長く続かなかった。思わぬ障害が部員達の前に立ちふさがる。ハジマリ高校演劇部が廃部!? そんな馬鹿なっ!
ついに明らかになる弁財天美の秘密。そんな……天美がウルトラ女神ガイアだったなんて!!
そして、全てを覆すデウスエクスマキナな超展開が始まるのだった!
地球の運命は! 雄斗次郎の運命はっ!
「……ってな感じにプロットをまとめてみたけどが、いかがっすか弁財プロデューサーっ!」
「んもうっ最高っ♪ ベリーグーッよ♪」
「ヤッター♪ 弁財Pからベリーグーッ♪いただきました〜〜っ♪」
「ええっと……オトっつぁん達、ノリノリで何やってんの? サッパリ分からないんだけど」
部室に入ってきたハナナちゃん達は、終始ポカ〜ンであった。そりゃそうだ。完全に2人の世界だもんな。創作活動的な意味で。
だけど安心してほしい。特に意味は無いからなっ!




