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4-24 造物作家

「そ、創作活動!? ヂマリちゃん今、創作活動と言いましたか!?」

「はい、確かに申しました♪」


 創作活動とは、文学や絵画などの芸術を独創的に産み出す活動のことだ。

 創作だの芸術だのと言うと高尚に聞こえるかもしれないが、なんのことはない。素人だってノベルや漫画を執筆すれば立派な創作活動なのだ。簡単…とは言えないが、質さえ問わなければ誰にだって出来るぞ。みんなもやろうぜ創作活動♪

 かくゆう私も創作活動にのめり込んだ一人だ。イラストや漫画。ノベルや動画制作。同人誌はコピー本にオフセット印刷。ホームページにGifアニメ。色々やったなぁ。どれも中途半端だったけど……。


「…ということは、妖魔はハジマリサマの創作物って事ですか? ヂマリちゃんも含めて」

「ハジマリサマは、ワタクシ達の神にして母親です。ワタクシ達妖魔は、ハジマリサマの創作物にして子供です」


 確かに……。私も、自分の作品や登場人物を我が子のように思った事がある。苦しまず新作が産み出せますようにと、神社で安産祈願のお守りを買った事もある。もし私のオリジナルキャラクターに自我があったら、私の事をなんて思うだろう。父親? それとも造物主だろうか?


「するとハジマリサマは、作家…なのですか?」

「あくまで『お父サマの図書館』に照らし合わした結果ですけれど、『神』や『母』よりは『作家』の方が近いと感じました。絵師に造形師、ラノベ作家に漫画家と、作家にも色々ございますが、造物主たるハジマリサマは、さしずめ『造物作家』…。もしくは『造物師』と言ったところでしょうか」


 高尚だがどこか胡散臭い『芸術家』って言葉を使わず、馴染み深いサブカルチャー界隈の言葉に絞って話を進めているところが、いかにも私の『図書館』を活かしてるって感じだな。安っぽい知識ばかりでごめんね、ヂマリちゃん。


「それでは……『ハジマリ契り』を執り行う意味は? 何故人間が、何故人の心が必要なのです?」

「創作活動を続ける上で必要な物を得るためです。お父サマならお判りですよね?」

「それってもしかして……インスピレーション?」

「はいっ♪ そうですっ♪ 正にその通りですっ♪」

「ハジマリサマの『大地の記憶』は、世界で起きた事象でしたら、過去から現在まで全て収めております。ですが、心に関しては未知の領域です。特に地上ビトは複雑怪奇。その行動は記録できても、何を考え行動したかは分かりません。

 もちろん、地上ビト全ての心が興味深いわけではありませんよ。大半はくだらない物ばかりです。ですけど希に、心に別世界を…小宇宙を内包する者がいます。それはハジマリサマにとって、とても面白いエンタテイメント小説のようなもの。熱狂的な読者となり、その全てを知ろうと貪るように読む事でしょう。そのための『ハジマリ契り』です」

「つまり、私達はお店に並んでいる本やDVDみたいなものですか」

「はい。その通りです♪」


 ああ、その通りなんだ……。

 まあ、人間は天上の神様が作った作品みたいなものだからな。ハジマリサマには新鮮な感動を得られるのかもしれない。

 これはギリシャ神話に基づいた持論だけど、人間も元は、ハジマリサマがガイアと名乗っていた頃に産みだした生物の一種族だった。ただし当時は類人猿で、他の動物達とあまり変わらなかったんだろう。それを天上の神々が遺伝子操作したり、神の子を産ませたりした結果、神の姿そっくりになったのだ。『原作者』であるハジマリサマにしてみれば、ビックリするほどの原作改変だったろう。

 もしかすると、ハジマリサマが妖魔を産みだしたのも、人間を神の姿そっくりに改変した事への対抗意識だったのかもしれないな。


「お父サマは不快に思われるかもしれませんが、それがハジマリサマの創作意欲を刺激するのです。心に小宇宙を持つ地上ビトは、ハジマリサマにとって、インスピレーションの源泉なのですよ」

「分かります。私も面白いアニメを観たり、漫画を読んだり、ゲームをする事で、創作意欲をかき立てられた事が何度もありました。ですけど、創作意欲は結果であって目的ではなかった。もしかして『ハジマリ契り』の一番の目的は、ハジマリサマの退屈凌ぎなのではないですか?」


 するとヂマリちゃんは言葉を詰まらせ、うつむいた。もしかして図星だったのか。


「………確かにそうかもしれません。ハジマリサマの本体…と申しますか、ご本尊は、地中の奧深くに埋もれていて、身動きが取れませんからね。もしかしたら、妖魔を産む事自体も退屈凌ぎかも……。

 ですが、尊い命をいただいた理由がただの退屈凌ぎなら、ワタクシは、ハジマリサマの退屈凌ぎに心から感謝する所存です。理由が何であれ、そのおかげでワタクシは、こうして生きているのですから♪」


 笑顔を取り戻したヂマリちゃんだったが、どこか寂しげでもあった。そりゃそうだよなぁ。退屈凌ぎで産んだなら、注がれる愛情も退屈凌ぎかもしれないし、退屈凌ぎで滅ぼされるかもしれないのだから。

 だけど、子供に親は選べないもんな。受け入れるしかない。


「ああ、よかった♪ 本当に良かったです♪」

「え? 何がです?」

「お父サマがハジマリサマに、とても興味を抱いてくださりました♪」

「そりゃまあ、創作活動をしてるなんて言われましたらね」

「でしたら創作仲間ということで、気兼ねなく接してあげてください。その方がハジマリサマもお喜びになります」


 気兼ねなく……ねえ。創作仲間とは言っても、ディズニーや手塚先生よりも大御所なんですが……。有名人とか著名人に会うと、緊張しすぎてテンパってしまうんですけど


「大丈夫ですよ。お父サマにとって親しみを感じる姿で現れますから。神様とか、大御所とか、そう言った事はすぐに気にならなくなると思いますよ」


 そう言いながら、ヂマリちゃんは私の腕からそっと手を離した。私がもう逃げ出さないと安心したのだろう。

 ……ちょっと残念かな。

 その瞬間、ヂマリちゃんが頬を赤らめ、困った顔になる。


「ぎゃ〜〜〜〜!! 心を読んじゃダメ〜〜〜〜!! ワシ恥ずかし〜〜〜!!」

「読んでませんっ! 読んでませんからっ! 逃げないでくださ〜〜い〜〜!!」

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