↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/126

4-12 第4階層

 ナリザさんの話によると、第4階層に出没する雑魚妖魔は、ナノミノノ妖魔窟の中でも屈指の強さらしい。第2階層の東西南北に鎮座する四天王ボスよりちょっと弱いくらいだとか。だけど、第3階層のボスを倒せる腕さえあれば余裕で勝てるので、上級者チームの格好の稼ぎ場所となっている。

 ここで腕を磨き、コアメタルを売った金で装備を調え、二体のボス妖魔を倒せるだけの力を身に付けた時、初めてラスボスに挑む資格を得られるのだ。ま、私達回収業者には関係のない話だが。


 ところで…。第3階層探索組と第4階層探索組は、強さではさほど違いはない。ところが見た目は全く違う。簡単に見分けが付くのだ。理由は増長と慢心にある。

 第3階層組は、とにかく第3階層ボスに勝たねば話にならないので、なりふり構わず強装備で身を固める。だから見た目もチグハグで一貫性が無く、どうしても泥臭くなってしまう。今のハナナちゃんの装備がそんな感じだな。

 ところが第4階層組になった途端、懐に余裕ができる。するとこれまでの反動で、豪遊したり、高級ホテルに泊まったりと、成金生活が始まるだろう。そこで気付くのだ。自分たちが強さを求める余り、身だしなみをおざなりにしていたことに。その結果、強さそっちのけで見た目重視のオシャレ装備を買い求める。自分は十分強くなったのだから、強装備に頼るまでもないと考える。つまり増長し、慢心するわけだ。

 まあこれは仕方ない。若者が一度は経験する通過儀礼のようなものだから。だけど心配には及ばない。自分たちが井の中の蛙に過ぎないことは、ラスボスとの戦いで思い知るから。

 言うなれば、第4階層における最大の敵は、増長した己の弱き心なのだ。慢心ダメ! ゼッタイ!


「こんなところで全滅するなんて、慢心どころではありません! アホの極みですよ~! 彼らには司祭様のお説教が絶対必要です~! 『全滅するとは情けない!』って言っていただかないとっ♪」


 硬質化した探索者を小箱に回収しながら,ナリザさんがこぼす。

 ナリザさんの口ぶりだと、ミュリエルラ司祭は宗教の教えを説く方ではなく、叱る方の説教をしているようだ。まあ確かに冒険者なんて、粋がってる不良みたいなものだから、ありがたくて退屈な神の愛を説く説教より、昔ながらの体罰付き説教の方が響くかもしれない。

 ミュリエルラ司祭って、温厚な人柄に見えるけど、意外と熱血教師肌なのかな?

 

「なあナリザ、これで回収は完了ってことでいいの?」

「ちょ~っと待っててくださいよハナナさん~♪ え~っと……そうですね~。二件を残して終了です~♪」

「残り二件っつーと……第1階層の筋肉と、フランツとか言う若造の回収し損ねた指……だっけ?」

「これこれ、ハナナさん~っ! 一応言っておきますけど~、フランツ君はハナナさんより年上ですからね~っ! 18歳ですから~♪」


 第1階層の『筋肉鋼組』は、様々な理由から回収を後回しにしていたが、現状では上に戻る方法が無いので無視していい。だけど『バルカス一家』所属の若き戦士フランツ君の指は、何とかして回収してやらないとな。あの若さで指を無くすのはちょっとかわいそうだ。


「それでナリザさん、フランツ君が指を無くしたのはどこですか?」

「第4階層のボス部屋です~。バルカスお父さんによりますと~、多分、手前側だそうです~♪」

「多分……ですか」

挿絵(By みてみん)

 第4階層にはボス部屋が二つある。手前側は第5階層へ続く左ルートの途中で分岐するが、奧側は反対の右ルートの突き当たりまで行かなければならない。もしバルカスさんが思い違いをしていた場合、両方を確認しなければならないので、非常に面倒くさい。しかも指は小さいから、見つけるのも大変だ。さて、どづしたものか………


「ああ、そうだ! ナリザさん、ちょっと待っていてください。迷宮ナビで落ちている場所を特定できるかもしれません」


 私は空間に表示されている第4階層マップのウィンドウを手前に移動させ、確認をはじめる。


「あ! ありました! 反応が三つ。よかった! 幸いにしてこの近くです!」

「え? 三つ…ですか~? 確かフランツ君が無くした指は2本だったはずですけど~」

「オトっつぁん、その反応って、もしかしてアタシ達じゃねーの?」

「あ………。た、探索を続けます………」


 だけど第4階層には、私達以外の反応は何も無かった。指が小さすぎて迷宮ナビに反応しないのだろうか? それとも、誰かに持ち出されて場所が変わっているのか?

 私は捜索範囲を広げる。念のため、まずは第1階層から。………うん、案の定だ。第1階層には何も無いな。

 あれ? 何も無い?

 死体はどうした? 確か『筋肉鋼組』のメンバーが二人、十字路で力尽きていたはずだ。なのに反応が無い。そういえば生き残りが独りいるはず。私達とは別の階段で第1階層に戻り、仲間を回収して妖魔窟から脱出したのだろうか? まあいい、疑問は後回しだ。

 続いて第2階層、第3階層と、チェックしていくが、反応はない。念のため第4階層もチェックし直すが、やはり私達以外の反応はなかった。そして最後に第5階層をチェックする。あ、あれ? これは……


「ナリザさん、第5階層のラスボス部屋に人がいます! 反応は一つ。そしてこの人の側に、指の反応もあります! こちらは二つです!」

「人っていうと、もしかして筋肉チームの生き残りか? でもあいつら、ここまで下りる実力なんてあったっけ?」

「ロウソクの臭いで妖魔達が混乱していれば、あるいは潜り込めるかもしれませんね~。ですけどお父さん……」

「ええ、場所が場所ですものね。もしかしたら、迷宮の主かもしれないわけで…」


 聞いていた2人に緊張が走るのを感じる。もちろん私も……。

 第4階層のボス部屋にあるはずのフランツ君の指が、二本とも側にあるのだから、私達を誘導するためと考えるのが妥当だろう。しかし唯一の可能性である『筋肉鋼組』の生き残りが、わざわざ第5階層まで下りて、私達にそのような事をするとは到底思えない。となると……答えは一つしかない。

 彼もしくは彼女の正体は、はたして何なのか? 何故私達を待っているのか?

 全てが明らかになる『その時』が迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。