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4-7 神と邪神と戦争と

 邪神と言われて思い起こすのは、ホラー小説家H・P・ラブクラフトの『クトゥルフ神話』に登場する異形の神々だ。その姿はおぞましく、心の弱い人なら一目見ただけで発狂してしまうだろう。

 しかし何故、怪物めいた姿の彼らを神と呼ぶのだろうか?

 例えば、ギリシャ神話には様々な怪物が登場するが、大半が神族の血を引く者である。生まれた時からの怪物もいれば、神や人だった者が怪物に堕とされた場合もある。では、神と怪物の違いは何か? ぶっちゃけると見た目だけだったりする。身も蓋もないけれど、そう判断するしかない。なにしろ、えげつなさでは怪物以上の神様なんて、いくらでもいるのだから。

 だけどそれは、あくまで『神話』という名の物語だからだ。物語だから読者に分かりやすく伝えるために、表現が誇張される。故に神々は、より美しく崇高な存在として描かる。故に怪物は、より邪悪でおぞましい存在として描かれる。それはもう仕方ない事なのだ。

 では、実際問題として神と怪物の違いは何だろう? それは信仰し崇拝する信者の有無だと私は思う。

 ラブクラフトの『クトゥルフ神話』には、カルト教団や狂信者が登場する。彼らが崇め奉るからこそ、おぞましき姿のそれは神と認識されたのだ。


 いや!


 突き詰めて考えれば信者すら必要無い。神認定する者がいて、それに共感する者がいれば良いのだ。

 物語でビックリするような展開があれば『神展開』。

 アニメで予算度外視の超絶作画が観れれば『神作画』。

 バラエティのロケで、計算ずくでは絶対不可能な面白ハプニングが撮れた時は『笑いの神が降りてきた』。

 手塚治虫を信仰する人は多くないだろうが、『漫画の神様』として認識する人は数限りない。

 SFの神様『モノリス大明神』の誕生秘話は実に興味深いので、キーワード検索して読んでほしい。

 正に『神が人を作るのではない。人が神を作るのだ』である。

 だから日本のネット界隈では、今この瞬間も、新たな神が次々と誕生している。流石は八百万の神の国。そんな日本が私は大好きだ。


 以上は私の神に対する認識である。が、あくまで私の持論に過ぎないので真に受けないでほしい。最近のTVショッピングで見かける『個人の感想です』ってヤツだ。

 さて、前置きが長くなってしまったが、ここからが本題。

 邪神とはなんぞや?


 言葉そのままの意味で言うなら、よこしまなる神。邪悪な神様だ。

 信者には恩恵をもたらすけど、生け贄に人の命を欲したり、世界を滅ぼしちゃったりする、迷惑この上ないコマッタチャンである。信者は信者ですでに狂ってるので、邪神からもたらされる恩恵の何が良いのか、一般人にはサッパリ分からなかったりする。

 世界を滅ぼされてはたまらないが、人の身で邪神は倒せない。しかし狂信者は狂ってても人間だ。だから邪神の召喚を阻止するため、カルト教団をぶっ潰す。臭いものに蓋をすることで問題を先延ばしにしながら、人類はかろうじて生き延びてきた。……んじゃないかな〜と、若い頃からよく妄想したものだ。

 いや、真実なんて知らないし、知りたくもないからね。そういうのは妄想だから楽しいんだから。


 では、言葉通りの意味でない場合は? 

 大して根拠もないのに邪悪と決めつける行為。ネガティブな神認定。すなわち『邪神認定』である。

 ただの悪口ならいい。…いや、ホントは良くないぞ! 良くはないが、まだマシだって意味ね。

 よく判らないものに怯えるのは人の本能だし、警戒するのも当然だ。

 問題なのは、暴力を正当化するための動機付けに利用されかねない事だ。


 《あれは邪神に違いない。滅ぼさなくちゃ(使命感)》


 信心深くて周りが見えない人ほど、こう言った歪んだ正義感に陥りやすく、利用されやすいのではないだろうか。

 特に一神教がそうだ。

 一神教の神は慈悲深いが寛容性が無い。自分の信者になれば罪も許すが、邪教徒は皆殺し。正しい神様は自分だけ。他の神はみんな邪神だからね、ちかたないね。

 実際は教団が権力を握るための暴走かもしれないし、権力者が己を正当化するために利用してるのかもしれないけど、弾圧され、迫害され、滅ぼされる側にとっては、どっちだろうと関係ないわけで……。


 だから唯一神教の修道女やってる帝国出身のナリザさんが、この謎めいた呪いの正体を邪神認定するのも自然だし…

 多神教国家である野薔薇ノ王国出身にして、女神の子孫と言われる野薔薇ノ民のハナナちゃんが、ナリザさんの邪神認定に反発を覚えるのも、自然な流れなわけで……

 嗚呼、今更ながら悔やまれる。迷宮に潜る前に釘を刺すべきだった。政治論争、宗教論争、そしてキノコタケノコ論争! この三つだけは決してやってはいけないと。判断を誤れば友情すらも無残に砕け散り、最悪の事態に陥ってしまう。そう! 戦争だ!

 そして今まさに、二人は一触即発!

 このままだと始まってしまいます! 『ポケットの中の宗教戦争』がっ!

 嘘だと言ってよバーニー!(涙目)

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