4-5 第3階層と迷宮ナビ
第3階層へ降りる階段は、第2階層の端っこに四ヶ所。北東、南東、南西、北西にある。いずれのルートもほぼ一本道で、それぞれ東西南北の四方向から中央のボス部屋へ進めるようになっている。そして第4階層へ降りる階段はボス部屋中央の一ヶ所のみ。
第3階層唯一のボス部屋は、第2階層の大広間と同じ広さだが、ボスに気取られず中央の階段に飛び込むのは難しそうだ。つまり第4階層に進むには、ボスを排除しなければならない。
思うに、攻略方法は二つある。判りやすくいえば、『戦隊』型攻略法と、『ライダー』型攻略法だ。
一つ目は、従来のオーソドックスな攻略。
チーム全員で同じルートを進み、一点突破に賭けるというもの。分散しなければ、途中で遭遇する雑魚妖魔には楽勝だろう。しかしボス戦では、一方向からしか攻撃できない。難易度が桁違いに高くなるのではないだろうか。
この攻略法で求められるは、スーパー戦隊のようなチームプレイ。仲間が力を合わせて放つ合体必殺技が欲しいところだ。
二つ目は、地形を活かした攻略。
言うなれば十字路トラップの逆バージョンだ。チームを二手から四手に分け、それぞれのルートからボス部屋へ向かい、ボスを囲んで攻撃する。前後もしくは四方を囲めば誰かが必ず背後に回れるので、ボス戦を有利に戦える。ただし、ボス部屋にたどり付くまでの雑魚戦では、かなりの苦戦が予想される。
この攻略法で求められるは、仮面ライダーのようなスタンドプレイ。単体でも怪人と渡り合える戦闘能力だ。仲間との連携は最小限で良い。
徹底したチームプレイか。
スタンドプレイから生じるチームワークか。
第2階層でも提示されていたチームの有り様だけど、第3階層はまるで究極の選択を迫っているかのようだ。
実際、高みを目指すなら、どちらかに方針を定め、同じ方針のメンバーをスカウトし、方向性の違うメンバーをリストラするしかないだろう。
なんだか、インディーズバンドがメジャーデビューする際のメンバー交代劇に似ているな……。
ふとそんなことを考えて、第三の選択があることに気がついた。無理に名を売って、メジャーにならなくても良いじゃない! インディーズのままでも良いじゃない! 名誉や金よりも、友情や絆を大切にするチームがあっても良いじゃない! だって冒険者はフリーダムなんだから!
いずれにせよ、第3階層攻略が、チームの未来を決定づける第三関門となるのは間違いなさそうだ。
「お父さん〜、準備は良いですか〜?」
「お待たせしました。いつでもオッケーです」
小箱はチーム毎にヒモで縛り付け、リュックにしまった。ロウソクも交換した。もうこれ以上、第2階層の大広間に留まる必要は無い。
「第3階層の遭難者は一組です〜♪ バルカスお父さんの報告によりますと、北西ルートで発見したとのことです〜♪」
「あ、それなんですけどナリザさん。提案があります」
「はぁ、提案ですか〜。なんでしょ〜?」
「お二人には見えていないようなんですが、実は私の周囲に光るウィンドウが沢山開いているんですよね。ほら、死体を回収した小箱のボタンを押すと、個人情報や回収率が表示されるでしょう? あんなヤツです。
どれもナノミノノ妖魔窟に関わる情報ばかりでして。遭難者の所在も細かく表示されているんですよ。ですが、この表示された情報が正しいかはまだ分かりません。もしかしたらこれもトラップかもしれませんしね。
そこで提案なのですが、第3階層はこの『迷宮ナビ』の情報を活かして探索しませんか?」
ちなみに『迷宮ナビ』とは、私が手にしている球体のことだ。ついさっき、思いつくままに命名した。
「へ〜〜〜♪ 面白そうですね〜〜〜♪ ではではお父さん〜、早速道案内お願いしますよ〜♪」
「了解です。ええっと、そうですね…。それでは最初は、南西…じゃなくて、南東ルートに向かいましょう。階段を下りてすぐに死体が一体あるみたいですから」
思いがけず、迷宮初体験のド素人が先導することになってしまったが、何故だろう。不思議と怖くなかった。『迷宮ナビ』を信用しているからだろうか。信用して……良いのだろうか?




