4-3 呪いと祝い
「あ~ん、妬ましい♪ 二人で楽しそうに何やってるんですか~♪ ナリザも混ぜてくださいよ~♪」
ナリザさんが戻ってきたので、こちらの状況を説明する。
「まあ!まあ!!まあ!!! お父さん、初迷宮でいきなり呪われましたか~♪ 冒険者なら祝杯をあげるところなのですけどね~♪」
「へ? 祝杯? 呪いが祝い?」
「冒険者にとっちゃ通過儀礼なんだよ。迷宮から生還して半人前。呪われて一人前ってね」
「ですから~、そんなに落ち込むことなんて無いんですよ~♪ 割と良くある事ですし」
「いや、私はただの町人なんだけど……」
「じゃあさ、これを気に冒険者に転職するってどうよ! アタシが手取り足取り教えてやるぜ~♪ 血湧き肉躍る世界にいざなっちゃうぜ~♪ クックックッ♪」
ハナナちゃんめニヤニヤしやがって。読み書きを覚えろって言った時の意趣返しかよ。くっそ~♪
「あ~、いいですね~♪ お父さんは読み書きできますから〜、今すぐにでも魔法使いになれますよ~♪ 何しろ冒険者してる魔法使いは、大半が見習い資格すら持たない自称魔法使いですからね〜♪」
ナリザさんもノリノリである。だけど勘弁して欲しい。命のやりとりは性に合わないんだ。
誘ってくれるのは嬉しいんだけどさ……。
「最近は、呪いアイテムを積極的に使う冒険者も少なくないんですよ~♪ 呪いの研究もずいぶん進みましたから~♪ 昔は死ぬしかなかった呪いでも~、今では何かしら対策が立てられますからね〜♪」
「問題があるとすれば、呪いアイテムとの相性だな。自分の戦闘スタイルに合った武具だったらメリットが大きくなるし、その呪いに耐性があればデメリットが小さくなるだろ? その逆だったら最悪だけど」
「具体的に例えるなら〜、やっぱり『ニャンコ剣士』でしょうか〜」
「そうだな。『ニャンコ剣士』が分かりやすいな」
「ニャンコ剣士? なんだそりゃ?」
「ネコ耳と尻尾の飾りを付けた、伝説の剣士です〜♪ みんな『ニャンコ剣士』って呼んでますけど〜、本人は『長靴をはいた仔猫』って名乗ってます〜♪」
「『仔猫』…ってことは、もしかして女の子なのか?」
「そう言うのは察しが良いんよな、オトっつぁん。確かに見た目はそうだよ。アタシよりも小柄で、14〜5歳くらいに見えるね」
「もしかして、見た目は子供、中身は大人ってヤツ?」
「うん。そんなヤツ。噂によると不老不死で、何百年も生きてるってさ。だから『化け猫』って呼ぶ奴もいるね」
「そのニャンコさんが装備している武具が、呪いの魔剣『ハートブレイカー』です〜♪」
「ひとたび鞘から抜けば、使用者に必ず勝利をもたらすと言われるトンデモ最強武器の一振りなんだけど、もれなく使用者の心臓が破裂するってヤバい呪いが付いてくるんだよね」
「心臓破裂って、それ死んじゃうだろ! ……ああ。……そういうことか」
「うん、そう。ニャンコ剣士は不老不死だから、心臓が破裂しても自力で元に治せるんだよ。だから『ハートブレイカー』だって使いこなせる。とはいっても、心臓が破裂したら死ぬほど痛いから、普段の戦いでは『ハートブレイカー』を鞘から抜かず、鞘ごと振り回してるんだって。まあそれも、呪いと共存するための知恵かな」
「なるほどね。例えるならフグ料理みたいなものか。命を奪う猛毒を持っていても、毒のある部位さえ取り除けば、美味しく食べられるもんな…」
そう言うと、二人の顔色が変わる。
「ちょっ! ちょっと待て! なんだよオトっつぁん、その例え! フグ料理ってなんだよ! フグ料理って! あの魚はとんでもない猛毒持ってるんだぞ! まさか……ガングビトって、フグ食べるのかっ?」
「うん。食べるけど…」
「しょっ! 正気ですか〜っ!! おかしいですよお父さん〜っ! 食べ物なら他にいっぱいあるのでしょ〜? どうしてわざわざ猛毒持ちを食べようって思うんですか〜!! その神経が信じられません〜〜っ! 不死者だって好きこのんで毒入りなんて食べませんよ〜っ!!!」
「いや、毒は抜いてるけど…」
「だからってありえねーよ!」
「だからってありえませんよ〜!」
二人にドン引きされてしまった。これが、食文化の違いってやつなんですかねぇ。




