4-2 ドロップアイテム 【8/24挿絵追加】
「オトっつぁんなに持ってんの?」
「え? あ…うん、なんだろう。よく分からないけど、左手が握ってた」
あらためて球体を見ると、まぶたは閉じられ、動く気配もない。目の錯覚だったのか?
「コアメタル……じゃないなぁ。なんだろ。ドロップアイテムかな? 妖魔や魔獣を倒した時、希に手に入るんだよな。希少価値があったり、特殊スキルの付いたアイテムが」
「なるほど、RPGじゃお約束だよな」
「あーるぴ−じーって何よ」
「伝説の勇者になりきって、世界を救う妄想をする……ゴッコ遊びかな?」
「なんだ、勇者ゴッコか。それならガキの頃よくやったよ。『勇者王にオレはなるっ!』とか言ってさ」
「でも、私は妖魔を倒すどころか、戦ってすらいないぞ?」
「別にいいんだよ。探索者の落とし物だろうと、ドロップアイテムの拾い忘れだろうと、迷宮での拾い物は拾い主の物なんだから。だからそのアイテムは、オトっつぁんのものさ」
「私のもの……とはいっても、どうすりゃいいのさ」
「そうだなぁ…街に戻ったら、鑑定士に価値があるか調べてもらうといいよ。
貴重品ならもちろんうっぱらう♪
特殊効果持ちなら、自分で使うかうっぱらう♪♪
落とし主が分かった場合は、返して謝礼を受け取るか、謝礼が見合わなければうっぱらう♪♪♪」
「基本換金なのね」
「冒険者には余計な荷物を持つ余裕が無いからね。お金が一番かさばらないから」
なるほど、合理的だな。でも私は下宿してるから、冒険者の合理的発想に従う必要は無いわけで。部屋に飾っていても何も問題無いわけだし、久々に蒐集癖をこじらせちゃおうかな?
謎のドロップアイテムは、ハナナちゃんのアドバイスに従い、とりあえずズボンのポケットに入れておく事にした。特殊効果持ちだった場合、身に付けておかないと効果が発動しないためだ。側に鑑定士がいない以上、効果を知りたければ装備するのが一番手っ取り早い。
「まあ、たまに呪われちゃう事もあるんだけどね〜♪」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
慌ててポケットから取り出す私に、ハナナちゃんは笑いながらこう言った。
「大丈夫♪ 大丈夫♪ もしそれが呪いのアイテムなら、手に握っていた時点ですでに手遅れだから♪」
「それって全然大丈夫じゃないじゃないですかヤダ〜〜!!」
私は思わず謎の球体を投げ捨てる。すると球体は、コーン、コーンと床を跳ね、壁で跳ね返ると私の手に戻ってきた。最後の跳ね返りは、あきらかに物理法則を無視した軌道だった。
「…………」
「…………」
「うおりゃぁ〜〜〜!」という叫び声と共に、私は大広間の反対側へと投げる。イチローのレーザービーム送球を彷彿とさせる剛速球を出したような気がする。気がするだけだが。
すると、遠くの壁で跳ね返った音が聞こえたかと思うと、野球のグローブでボールを受けた時のスパーンという音と共に、左手に焼けるような痛みが走った。再び我が手に帰ってきたのだ。お帰りなさいコンチクショ〜!
「これは確定デスネ〜。ご愁傷様でした~~♪」
もう笑うしかない。そんな状況だった。心なしか、謎の球体も微笑んでいるような気がした。




