3-31 独りぼっち
大広間で分断されたチームが通路を回って合流するなら、どんなルートを選ぶか。
妖魔だらけの迷宮で独りぼっちは誰だって心細い。一刻も早く仲間と合流したいに決まってる。距離が短く障害も無さそうな内円ルートを選ぶのが心情ってものだ。
では、外円ルートは? きっと地図を見た探索者は驚愕する事だろう。なんと、横道が全て十字路になっているという鬼畜仕様。第1階層の十字路トラップを経験していれば、一人では怖くてとても進めない。問題外だ! と、誰もが思うだろう。
しかしナリザさんの話だと、意外にも外円ルートは妖魔があまり現れないらしい。十字路で四方を囲まれる事もほとんど無いのだとか。実は、外円ルートの十字路はトラップではなく、一人になって心細い探索者を内円ルートに誘導するためのブラフなのだ。第2階層の真のトラップは内円ルート。孤立した探索者が仲間との合流を焦るあまり、内円ルートを選択すれば、そこには妖魔が手ぐすね引いて待っている。
つまり、我々全滅探索者回収業としては、内円ルートを重点的に探索すれば良いわけだね。
早速ハナナちゃんは西側へ、ナリザさんは東側へ回収に向かい、私は大広間の北階段側に陣取った。大きなリュックを下ろし、棺の小箱を出して、ハナナちゃんが戻ったらすぐに交換できるよう、万全の準備を整えておく。
「ただいまっ! 次の小箱ちょうだい!」
「おおっ、早いなハナナちゃん! もう見つけたのか」
「アタシのスピードはこんなものじゃないぜっ! さあ、どんどん行くよ〜っ♪」
こうしてハナナちゃんは10分ほどの間に10往復する。つまり、硬質化死体10人分を回収したということ。
……やけにハナナちゃん側に片寄ってるな。もしかしてナリザさん側はハズレだったのかな?
「ただいまですお父さん〜♪」
噂をすれば何とやら。ナリザさんが小走りで戻ってきた。
「おー♪ お帰りなさいナリザさん♪ 成果ありましたか〜?」
「見てくださいよお父さん〜♪ こんなに回収しちゃいましたよ〜♪ 大当たりです〜〜♪」
「……あれ?」
ハナナちゃんが戻ってきたところで、回収した小箱の数を数えてみる。奇しくも共に11個。合計22個だった。
チーム別に分けてみると、5チーム分もある事が判明した。そのうちコンプリートできたのは3チーム。
「想定外の遭難者がいる事は予想していましたけれど〜、これはちょっと多すぎですね〜」
「小箱、足りますか?」
「下の階層にあと3チームいるんですけど〜、……まあ、大丈夫でしょ〜♪ 見たところ、残りのチームもリーチがかかっていますし〜、た〜ぶ〜ん〜、回収洩れはあと二人ですね〜♪」
「だったらアタシが先に外円ルートをざっと回ってみるよ。それから西半分の第三階層に続く道と、ボス部屋のチェックかな」
「でしたらナリザは〜、北のボス部屋から時計回りにチェックしていきましょ〜♪
お父さん〜。ちょっと寂しくなると思いますけど、待っていてくださいね〜♪」
「大丈夫大丈夫、そういうの慣れてるから♪ 二人とも頑張って! いってらっしゃい♪」
「おう! 行ってくるぜ!」
「行ってきます〜♪」
二人がいなくなると、大広間は途端に静寂に包まれる。ナリザさんはともかく、ハナナちゃんの走り回る音も聞こえない。私は……独りぼっちだ。
いやいや、そんなことはない! ここにはランタンのジャック君がいるじゃないかっ! カボチャ頭の生首だけで、目と口をらんらんと輝かせながら、私を見守ってくれているじゃないかっ!
………だめだ。妄想も捗らない。せめてジャック君が萌え美少女だったら、「ゆっくりしていってね♪」とか言ってくれそうなのにな。
なんだか虚しい…。果報は寝て待てって言うし、眠っちまおうかな。
いいや、もう寝ちゃえ……。
睡魔の誘惑に負けてしまった私は、壁により掛かると目を閉じてしまった。




