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オトギ生活 〜オッサンだけど異世界《トンデモナイトコロ》に来てしまった。どうしよう〜  作者: 風炉の丘
雄斗次郎の長い一日 第3章 王国内地下迷宮にて全滅した探索者の定例回収業務
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3-26 迷宮地図

 私達は、迷宮の門の手前でカボチャ頭のランタンをかざしながら、ロウソクの匂いが広がっていくのを待っていた。

 まどろっこしい気もするが、私のような素人がいるのだ。安全を第一に考えるくれるのはありがたい。

 その間、暇つぶしにと、ナリザさんは迷宮地図を広げて、私に色々説明してくれた。


「大変なのは第二階層からでして=♪ 第1階層はいたってシンプルですよ~♪ 文字に例えるなら田んぼの『田』ですね~♪」

「ん? これは…入り口部分の通路が長いから、『田』というより装甲の『甲』でしょう」

「お~~!! 言われてみれば確かに甲ですね~~っ!! 入り口通路の事すっかり忘れてました~♪

 さすがお父さん♪ 博識ですね~♪」

「いやいや、この程度常識ですから~」


 日本語がそのまま使えるのは本当にありがたいな。ナリザさんの例えがすごく判りやすいし、こちらも伝えやすい。

 二人で盛り上がっている中、ハナナちゃんは暇を持て余していた。しょうがないなぁ。


「おやおや~? ハナナさんどうしたんですか~♪ 話題に入れなくて寂しいんですか~~♪ ぷーくすくす♪」

「読み書きできると世界が変わるんだけどな~~♪ ハナナちゃんがその気なら、手取り足取り教えちゃうよ~~♪ 素晴らしき世界にいざなっちゃうよ~~♪ クックックッ♪」

「うっ! うっさいな~~! アタシは字なんか見てると眠くなっちまうんだよっ!」


 ナノミノノ妖魔窟は、先駆者が命を張ってマッピングしてくれたおかげで、結構な昔から地図が出回っている。

 だけど印刷技術が発展していないオトギワルドでは、本や書類の大半が手書きである。そのため、ちゃんとした地図は高額で取引されていて、庶民にはなかなか手が出せない。世間で普及しているのは、模倣士によって描かれた精度の甘い模写で、こちらなら比較的安価で手に入る。

 実は私も何度か、模倣士の仕事を斡旋してもらった事がある。これでも模倣士見習いの資格持ちなのだ。まあ、一定時間仕事をこなせば、誰でももらえる資格なんだけどね。

 模倣士見習いの最初の仕事は、冒険者向けの最も安い地図の模写。白い紙に鉛筆一本で描いただけの、極めてシンプルな手書き地図だ。短時間で数をこなさねばならないため、最低限の事しか書き込んでないラフなのだが、冒険者にはこれで十分らしい。迷宮では何が起きるか分からないから、高価な地図一枚より、破いても汚しても無くしてもかまわない地図を10枚持っている方が、遥かに安心なのだそうだ。

 今ナリザさんが持っている地図は、正にその、模倣士見習いの描いたラフ地図であった。私が描いたもの……では流石にないか。書き込んである線や文字が明らかに私のものではなかった。


「ところで、『甲』の字の上と左右にあるのは階段ですよね? 三つありますけど、どれを下りるんですか?」

「どれも第二階層の大広間に通じていますから〜、どれを降りてもいいですよ〜♪ ハナナさん冒険者として何か意見はありますか〜?」


 おおっ! ナイスフォローだナリザさん! 渋々かもしれないけど、ハナナちゃんが会話の輪に入ってくれたぞ。


「そうだね…。ソロの冒険者としては、中央の十字路には絶対近寄らないね。四方を囲まれてタコ殴りにされちまう。敵が弱くても、四方からの攻撃はヤバいからね」

「ん? それを言うなら、左右の通路だってやばいんじゃないの? 階段から敵が来ればやっぱり四面楚歌だろ」

「それは大丈夫。あいつらナワバリ意識が強いからさ、滅多な事では別の階層に行かないんだよ」

「へ〜。じゃあ、階段は安全地帯なのか?」

「一時的には安全かもしれませんけど〜、長居は禁物ですよ〜♪ 我が家によそ者がいれば、誰だってぶぶ漬けを振る舞いたくなるものです〜♪」

「……オトギワルドでも、ぶぶ漬けって通じるんだ…」


 軽くカルチャーショックだった。デカルチャー。

 ……話を戻そう。


「アタシみたいなソロの冒険者には、十字路はデストラップそのものだけど、腕に自信のあるヤツが複数でチームを組んでたら、格好の稼ぎ場所だろうな」

「その通りですね〜♪ ですけど〜、調子に乗ってるとやっぱりデストラップになっちゃうんですよね〜♪」

「つまり、そこに全滅遭難者がいる?」

「いえいえ〜♪ 司祭様からのお手紙には書いてませんでしたよ〜♪ 書いてませんでしたけど〜♪ もしかしたら〜」

「あ〜〜〜、なるほどね〜〜。キンニクンがいるかもしれないと」

「か弱いナリザに凄んでた殿方が〜♪ どんな断末魔を上げながら固まっているのか〜♪ ナリザとっても楽しみなのです〜〜♪

 ………じゃなくてっ! ナリザそんな怖い子じゃなりませんよ〜っ! ナリザ良い子ですから〜っ! そんなドSなヘンタイさんじゃないですから〜っ!!」


 慌てて私に体裁を繕うナリザさん。まあ色々手遅れなんですが、そう言う事にしておきましょう。


「そろそろ匂いも頃合いですね〜。じゃあ、行きましょ〜♪」


 ナリザさんが先行して闇の中へと入っていった。

 いよいよ迷宮初体験。中には…何が待っている?

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