3-25 夜目
真っ暗闇だった。
入り口からランタンをかざしても奥が見えない。
そもそもカボチャ頭のランタンは目と口の部分しか空いていない。インテリアとしては面白いが、光量が絶対的に足りなすぎて、照明としての実用性は皆無なのだ。
こんな装備だけで迷宮に潜れと? ロウソクの強烈な匂いで妖魔には襲われないかもしれないけど、めっちゃ怖いです。
「松明とか…無いのかな?」
「今どきの冒険者は松明なんか使わねーよ。片腕が塞がっちまうだろ」
確かに…。剣と盾を装備してたらどちらかを諦めなければならなくなるし、両手武器は装備自体出来ない。
じゃあ、どうするんだ?
「対処法は二つあります〜♪ 一つは両手を塞がない形で周囲を照らす照明を用意する方法♪ もう一つは視覚に働きかけて夜目がきくようにする方法♪ 最近のトレンドは後者ですね〜♪ 照明は光でこちらの存在をアピールしてしまいますからね〜♪ 獲物を狙うはずが逆に不意打ちされたり、逃げられたりと、ろくな事がないんですよ〜♪」
「た、たしかに……」
「お二人とも、ちょっとそこでじっとしててくださいね〜♪
我らに闇を見通す狩人の目を! カセェ=フ=ハミタァ!」
突然、視界が明るくなり、真っ暗闇だった迷宮の奥が見えるようになる。少なくとも5メートル先までははっきり見えるようになった。軍隊で使う暗視装置を付けているみたいだ。違いがあるとすれば、暗視装置の場合は画像が緑色に調整されているけど、こっちは色つきで見えるってところか。
振り返ると思わずビクッとなる。ナリザさんやハナナちゃんが獣のように目をらんらんと輝かせていたのだ。どうやら夜目がきくようになって、目が反射する光まで見えるようになったらしい。
奇跡の技とは凄いものだと私が感心していると、突然ハナナちゃんがナリザさんに噛みついた。いや、あくまで比喩表現であって、本当に噛みついてる訳じゃないぞ。
「ちょっと待てや〜っ! これって奇跡じゃないじゃん! 魔法じゃん! 唯一神教じゃ魔法は異端の技なんじゃなかったのかよ!」
「フフフ〜っ♪ ハナナさんに格言を教えてあげましょ〜っ♪ 『バレなきゃいい』んですよ〜♪ バレさえしなければ、天に神はいまし、世は全て事も無しなのです〜♪」
いや、いかんでしょ! 誰もいないと思っていても、どこかでどこかで天使さんは、いつでもいつでも眺めているんだぞ! ちゃんとちゃんと眺めてるんだぞ! 昔、森永のCMで観たから間違いないっ!
「くっ…、確かに一理ある…。命を張った仕事で綺麗事なんて言ってられないか…」
あ〜っ! ハナナちゃん納得しちゃったよっ! これだから冒険者は犯罪者予備軍なんて言われるんだぞっ!
「ちなみにナリザさん、バレたらどうなっちゃうんですか?」
「神は地に降り、罪を討ち滅ぼすであろう、とのことです……」
「あーなるほど、つまりお仕置きされちゃうと……」
「ですからくれぐれも! くれぐれも司祭様だけのはチクらないでくださいね〜っ! お願いしますよお父さん〜!」
「アッハイ」
チクる気なんて更々ないけど、うっかり喋ってしまう事はあるかもしれないからなぁ…。気をつけよう。




