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オトギ生活 〜オッサンだけど異世界《トンデモナイトコロ》に来てしまった。どうしよう〜  作者: 風炉の丘
雄斗次郎の長い一日 第3章 王国内地下迷宮にて全滅した探索者の定例回収業務
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3-18 第一関門 【8/26挿絵追加】

 太陽が高く昇っているおかげで、縦穴の底がよく見えるな。頑丈そうな迷宮の扉もよく見える。

 半開きになった観音開きの扉もよく見える。

 あれ? おかしいな。2時間くらい前に見た時は、日陰で見えにくかったけど、扉は閉まっていたはずだぞ?

 …………ああそうか。駆け込み冒険者の筋肉トリオが開けっ放しにしてたんだな。

 しょうがないなぁ。開けたら閉めなさいよ。


 私達は、杭が打ち付けられている縦穴の下り口に到着した。長方形の縦穴の三方はほぼ直角の壁だけど、ここだけは60度と傾斜が緩やかだ。………直角よりは緩やかだろ?

 言うなれば『ナノミノノ妖魔窟』の第一関門だ。ここを上り下りできる程度の登攀スキルか、飛行スキル持ち以外には、決してお薦めできない迷宮というわけだ。

 もちろん、チームで力を合わせて上り下りできるのならその限りではない。ちょうど今の私のように。

 とはいえ、救済措置もある。縦穴の側に打ち付けられている長い杭には、ロープが何重にも巻き付けられているのだ。


「オトっつぁんどうよ? 行けそう?」

「ロープを伝っていけば何とかなりそうだけど、荷物を背負ったままはキツイかねぇ」

「お父さん、無理しなくてもイイですよ〜♪ リュックはロープに縛り付けて下ろしましょ〜♪ 引き上げる時もそんなカンジで〜」

「なるほど、ではお言葉に甘えさせていただきます」


 私は杭のロープを緩めると、その先をリュックの肩ベルトに縛り付けた。


「それではナリザは先行いたします〜♪」


 軽くレディのような会釈をすると、ナリザさんは両手にカボチャ頭を持ったまま、まるで階段を駆け下りるかのように、ひょうひょうと下っていった。慣れているとはいえ、凄いな。


「イイですよ〜♪ リュック下ろしてください〜〜♪」

「はーい! じゃあ行きますよーー!!」


 中身を壊したり、まき散らしては大変だ。慎重に下ろしていこう。

挿絵(By みてみん)


「お父さ〜ん! 慎重すぎます〜〜〜っ! 日が暮れちゃいますよ〜〜〜! もっと早く〜! 落としてイイですから~♪」

「いや、落としちゃいかんでしょう! と、とにかく急ぎます〜〜」


 なるべくリュック傷まないよう、傾斜60度の坂だか壁だかに引きずらせないよう気をつけていたのだが、急げというのなら仕方ない。ペースを上げて、どんどん下ろしていった。

 その甲斐あって、程なくして荷物はナリザさんの手元に届いた。ナリザさんはその場にしゃがむとカボチャ頭のランタンを地面に置き、リュックからロープを解き始めたが………。どうやら私のせいで難航しているようだ。


「もう〜〜〜お父さんってばぁ〜〜! なんですかぁ、このロープの結び方〜! 何回固結びすれば気が済むんですかぁ〜〜!! 全然解けないんですけど〜〜〜!」

「すみませ〜〜ん。途中で外れて荷物が落ちたら一大事だと思いまして〜〜!」

「ロープの結び方や縛り方はちゃんと覚えて置いた方が良いですよ〜〜! でないと、女の子を縛る時に困っちゃいますから〜〜〜♪」

「ゴラァ〜〜!! 修道女が嬉しそうにSMの話題とかしちゃダメ〜〜っ!!!」


 ったく……困ったお人だ。本当に修道女になる気あるのかねぇ?


 あれ?


 今、何気なく迷宮の扉を眺めた時、何か違和感を感じた。

 あれ? なんだ? なんだ? なんだ? ……あれはなんだ?

 半開きだった扉が、今は完全に開いていた。扉の奧は光が届かず、真っ暗で何も見えない。

 だけど、もしかして……もしかしたら………


 何か……いる?


 ナリザさんは扉に背を向けたまま、私がリュックに結んだロープに悪戦苦闘している。あれでは扉の異変に気付きようがない!

 知らせないと、まずいんじゃないか?


「あの〜! ナリザさん!!」

「は〜い。なんですか〜〜」


 気のない返事を返すナリザさん。ロープを解くので忙しいようだ。

 でも今はそれどころじゃない。急いでナリザさんに知らせなくちゃ。

 だけど手遅れだった。

 開いた扉から四つ足の獣が、ナリザさんに向かって飛び出してきたのだから。


 私はただ、「あっ!」と叫び声を上げることしか……

 それだけしかできなかった。

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