3-2 わだかまり
ちょっと今回は内容が無いかな?
それにしてもすごいな。ダンジョンで全滅した冒険者達が教会で復活するなんて、RPGの中だけのご都合主義だと思っていたのに、オトギワルドでは実際に行われていたのだ。
ただし、誰もが復活できるわけではない。復活できるのは唯一神教の信者のみなのだ。
ズルイというか、賢いというか、唯一神教団はその奇跡の技を独占し、布教に活かしている。
命を落としやすい冒険者にしてみれば、背に腹は替えられず、崇める神を唯一神教に鞍替えした者も少なくない。
そう言えば冒険女子のハナナちゃんは?
「あ? あんな胡散臭い宗教、誰が入るかよ! いや、もちろん女神のご先祖様を裏切れないってのもあるけどさ。
そもそも死んだら教会で復活とか、甘えなんだよ! 甘え!
死んだらそこでお終いなのっ! そんな状況でなくちゃ、精神は研ぎ澄まされないの! 本当の意味で強くなんてなれないんだよ!」
それはハナナちゃんなりの求道者としての美学…なんだろうか。一般人の私には到底たどり着けない境地なのだと思うけど、そう言う頑固なこだわりは嫌いじゃない。ハナナちゃんにはこれからも貫いて欲しいものだ。
それはそれとして。
今回のこの『めいぜんっ!』は、個人的には実に興味深い。言うなればRPGのシステムを陰から支える裏方仕事みたいなものだ。やり甲斐も感じる。だけど、同時に尻込みもしていた。やはり国際問題は怖い。
「え〜っと、やっぱり辞退しても……はははっ、無理ですよね今更」
モモカさんに涙目で訴えられては拒めるわけもない。腹をくくろう。
するとモモカさんが私を励ますようにこう言った。
「むしろオトジローさんだから安心なのです。異教徒だからって無闇に喧嘩なんて売らないでしょう?」
「それはまあ、わだかまりなんてありませんし……。あ…」
確かに私にわだかまりはない。だけどハナナちゃんはどうだ? 彼女は生粋の野薔薇ノ民で、剣術を習得している。動機も手段も両方とも持ち合わせているのだ。
諸刃の剣か…。ハナナちゃんが同行すると聞いて心強かったが、思わぬ爆弾を抱えてしまったぞ。
そんな私の不安に気付いたか、モモカさんは私に近づくとそっと耳打ちする。
「もしもの時は、ハナナちゃんをいさめてくださいね。ハナナちゃんって、オトジローさんの前では聞き分けが良いんですよ♪」
「え? そうなんですか?」
「そうなんですよ♪」
自分勝手でわがままな気がするけどなぁ……。あれで聞き分けが良いのだとしたら、普段はどんだけメチャクチャなのだろう…。
あ、ハナナちゃんがふてくされている。
私とモモカさんが内緒話をしていたのがお気に召さなかったのかな?
「おら〜! バッジだぞ! 受け取れ〜〜!」
「バッジは外れないよう胸に付けておいてくださいね」
飛んできたリンゴン・ベルが私のハナナちゃんにバッジを落としてくる。マルとバツを組み合わせたシンプルなデザインだった。
バッジを胸に付け、朝市で買った戦利品をモモカさんに預かってもらい、準備は万端整った。あとは二人で教会に向かうのみ。
「もう時間がありません。教会には魔法でお送りします。ちょっとそこで待っていてください」
モモカさんは王都ノイバラの地図を出すと、特定の位置を指差しながら呪文を唱えた。
「では二人とも、お仕事がんばってくださいね。サイ=ターン!」
もしかして、またボッシュートですか? と思った矢先、私達の立っていた場所の床が無くなる。
発動が早い。リンゴン・ベルの魔法とは大違いだ。
落下した途端、景色が一変した。頭上には太陽と青空。遠くには野薔薇城が見える。王都ノイバラのどこかである事は間違いない。
不意の落下に姿勢を崩した私は、尻餅を覚悟してショックに備えたが、地面に近づくにつれ、落下速度が落ちていっている事に気付く。これもモモカさんの魔法か。実に配慮が行き届いている。おかげで空中で姿勢を正し、無事足から着地できた。
ハナナちゃんは隣に立っていた。問題は無いようだ。頭上を見上げると、すでに落とし穴は消えていた。
そして目の前に教会があった。




