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オトギ生活 〜オッサンだけど異世界《トンデモナイトコロ》に来てしまった。どうしよう〜  作者: 風炉の丘
雄斗次郎の長い一日 第3章 王国内地下迷宮にて全滅した探索者の定例回収業務
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3-1 めいぜんっ!

第3章スタートです。

プロットや設定に変更はないのですが、ノベル化にあたり内容を突き詰めてみたら、想定していたよりも遥かにオオゴトであることに気付いて、こんな内容になりました。

「リンゴ、二人の書類の手続きと、バッジをお願いね」

「あいあ~い」

「それではオトジローさん、業務内容を説明いたします。あ、ハナナちゃんも一応聞いていてくださいね。

 お二人にお願いするお仕事はですね……」


 そこでモモカさんは、すぅっと息を吸い込み、呪文を唱えるかのように一気に言い切った。


「『王国内地下迷宮にて全滅した探索者の定例回収業務』です! …ふう、言えました」

「お、お疲れ様です…」


 まるでラノベのタイトルのように長い正式名称だった。

 だけどそのおかげで、業務内容が何となく理解できる。国内にあるダンジョンに潜って、探索者を救出………ではなく、回収なのか。富士の樹海で自殺者の遺体を回収するようなものかな? だとしたらかなりキツそうだ。

 だから尚のこと、モモカさんにやらせるわけにはいかない。私が頑張らなければ…。


「略して『めいぜんっ!』です」


 これまた日常系四コマ漫画みたいな略称だった。迷宮で全滅だから『めいぜん』か…。どう考えても『~っ!』の部分はいらないと思うのだが。

 ライトなイメージを持たせようと苦心した結果、萌えキャラに走ってしまった地方の行政のような、やらかした感があって、実に痛々しい。


「そしてこの仕事の依頼主は……、唯一神教団、野薔薇ノ王国支部教会です」


 唯一神って…… えっ!?

 私は驚きを隠せなかった。

 唯一神教団とは、「神はただ一柱のみ」をうたい、他の神々を否定する排他的宗教組織だ。過去には魔道士を邪教徒として忌み嫌い、迫害してきた歴史がある。現在は強大な隣国である帝国の国教として認知されている。

 野薔薇ノ王国は、多神教国家であり、昔から魔道士の保護政策を率先しており、更に帝国に組みせず独立を貫いている。唯一神教団はあらゆる意味で、王国の敵なのだ。

 なのにその敵組織の出先機関が、王国内に存在するだって?

 ………いや、驚くには値しないか。我が母国日本も、あらゆる敵組織に入り込まれているスパイ天国だもんなぁ。


 だけどなんだか変だな。なんで教団が迷宮で全滅した探索者の死体回収を依頼してくるんだ? 国内での死亡事案なら、管轄は王国側にあるんじゃないのか?

 私はモモカさんに疑問を率直に聞いてみた。すると、思いがけない答えが返って来る。

 

「あ、いえ、違います。オトジローさんは根本的な所で誤解をしています」

「誤解……ですか?」

「はい、そうです。お願いするお仕事は死体回収ではありません。全滅した探索者は確かに死にかけていますが、彼らは生物活動が停止しているだけで、決して死んではいないのです」

「生物活動…? 生命活動ではなくて生物活動……ですか?」

「そうです。致命傷を受けた探索者は、死を迎える直前に時間が止まり、人形のように固まります。生物活動が停止し、無生物状態になるのです。

 迷宮で人形のように固まった探索者の身体を全て回収し、教会に運び込む。これが今回お願いするお仕事なのです」

「すみませんモモカさん。イマイチよく分からないのですが、何故教会に運び込むのですか?」

「ああっ、ごめんなさい。肝心なことを言い忘れていました。

 オトジローさんに回収していただく探索者は、みなさん唯一神教の信者なんですよ。そして死ぬ直前に人形のように固める技も、元の姿に蘇生する技も、唯一神教団が独占している魔法の技なのです。もっとも教団の方々は、自分たちが使う魔法を『奇跡』と呼んでいますが」


「本来なら教団の有志が回収作業を行うのですが、王国としては自国内で教団に好き勝手にさせるわけにはいきません。とはいえ、王国内で活動する探索者は外国人も多く、奇跡の技の利便性から唯一神教の信者になる者もいて、放置出来ない状況でした。迷宮内に敗北感溢れる彫像が増えても困りますしね。

 人道的配慮を決めた王国政府は、布教を一切行わないことを条件に、王都ノイバラに一ヶ所だけ、唯一神教団の拠点を建てることを許しました。それが今回の依頼主である野薔薇ノ王国支部教会です。

 更に教団の人員を最小限にするため、回収業務の助手を斡旋処に依頼することになりました。オトジローさんにお願いするこのお仕事は、教団側と王国側、双方の思惑がぶつかり合った結果生まれた、政治的妥協の産物なのです」

「それはつまり……何かトラブルでも起きれば、国際問題になりかねない…と?」

「そうですね……そうかもしれません。お互い面倒ごとは御免ですので、些細なことでしたら目をつぶりますが、物事には限度がありますので……。特にハナナちゃん! 面倒ごとは本当に勘弁してね!」

「はいはい、分かりましたよ。アタシだって人間同士で戦争なんかしたくないもの」


 ………どうも予想以上にヘヴィなお仕事のようだ。肉体的負担より、精神的負担が特にヘヴィな気がする。

 私やハナナちゃんが戦争の引き金にならないよう、気をつけなければ。

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