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2-19 帰還

なんか書けてしまったので、連続投稿です。今回も1500文字未満でしたが。

 そうと決まれば善は急げだ。買い物をしながら歩いているうちに、斡旋処からかなり離れてしまった。走れば30分くらいで戻れるだろうか。っていうか、30分も私は走り続けられるのか?


「ああ、オトっつぁん、待って待って! 走らなくても大丈夫だから!」


 走り出した私を、慌ててハナナちゃんが呼び止める。振り返ると、ハナナちゃんはリンゴン・ベルに話しかけていた。


「だからリンゴ、帰還の魔法を使ってよ」

「やだよ。ヘンタイなんかとかかわりたくないもん」


 すると突然リンゴン・ベルを掴むと、間近で睨み付ける。


「や・れ・よ、た・の・む・か・らっ!」

「アッハイ」


 今一瞬、ハナナちゃんが凄い顔をしていたような気がするが、きっと気のせいだろう。うん。


「オトっつぁんこっち来て~♪ リンゴが快く引き受けてくれたよ~♪」


 満面のかわいい笑顔で手を振るハナナちゃん。うん、やっぱりさっきの般若顔は気のせいだな。


 ハナナちゃんは私の右腕に、両腕をからめてしっかりしがみついてきた。


「オトっつぁん、こういうのが嬉しいんだろ♪」

「あの~~~、えっとですね……」


 おっぱいはおっぱいでも、おっぱいアーマーはちょっと…。頑強な金属製チェストプロテクターを装着したまま腕に押しつけられても、痛いだけなんですが…。泣いていいですか?


「いいよリンゴ! やっちゃって~♪」


 リンゴン・ベルは数秒ほど気合いを込め、そして呪文を叫んだ。


「ハイ=キ=カーン!」


 ………………………………

 あ、あれ? 何も起きない?

 この手の魔法は、ぴゅーんと空を飛んだり、瞬間移動したりするんじゃないのか?


「オトっつぁん、何見上げてるのさ。下だよ下。下に気をつけて」

「え? 下?」


 下を見下ろすと、なるほどすでに異変は始まっていた。私とハナナちゃんを中心に半径1メートル程度の円の図形が発生しており、回転していたのだ。

 回転する魔法陣は徐々に薄らいでゆき、ガラス板のように地面ごと透明化が進んでゆく。

 半透明になって来たあたりから、だんだん下の風景が見えてきた。板の間に人影が見える。地下室だろうか? こんなに道ばたに? あり得ない。

 部屋は明るいが、人工的な光ではなく、自然光で照らされているようだ。それにこの部屋、どこかで見たような気がする。…もしかして斡旋処の受付か? 一階受付の天井から、床を見下ろしているのか? つまり、道ばたの地面と、斡旋処の天井が繋がろうとしている?


「もうじきだよオトっつぁん!」

「へ? ……うわぁ!」


 完全に透明になった瞬間、床が消えた。落下する私とハナナちゃんは、真っ逆さま……にはならず、ストンときれいに着地する。ハナナちゃんが腕を掴んで支えてくれたおかげで、転ばずに済んだようだ。ナイスアシスト。

 二階があるはずの天井を見上げると、円い穴から青空が見えていたが、リンゴン・ベルが降りてくると同時に穴も閉じた。


 あとで聞かされた説明によると、空間を曲げることで、空間座標を対象の地面と目的地の天井を繋げ、落とし穴状の移動トンネルを生成する。それがリンゴン・ベルの唱えた移動魔法『ハイ=キ=カーン』だ。落とし穴にすることで自然落下が利用できるから、どんなに重い荷物でも簡単に運ぶことが出来るのが利点だ。え? 落下ダメージ? そんなものは回復魔法で解決よ! 豪快だねどうも。

 ただし、リンゴン・ベルの魔法には色々と制限があり、『ハイ=キ=カーン』の場合、移動先はモモカさんの居場所周辺に限定されている。つまり、お使いなどで遠出をしたリンゴが、モモカの元に戻る時にしか役に立たないのだ。今回はその能力故に役に立ったわけだけど。


 さて、モモカさんはどこかな? 仕事には間に合うのかな? 急いで探さないと……

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