2-18 父親
今回は1500文字行かなかったけど、切りがよいのでうpります。
「も~~~! なんでオトっつぁんはいつもそうなんだよっ! エロければ誰でもいいのかよ! この浮気者~!」
「グハッ、ゲホッ、ゴフッ」
斡旋処に戻ろうと背中を向けた途端、ベソをかくハナナちゃんに背中をポカポカと叩かれる。傍目には拗ねる女の子のかわいい行動なのだが、拳の1発1発がやたらと重い。
そんな中、ハナナちゃんの罵倒に違和感を覚えた。
かわいい、きれい、エロいは、男が乙女に望む三大リビドーと言ってさし支えないだろう。だけど私は過度なエロスが苦手で、むしろ避ける傾向にある。それはハナナちゃんだって知っているはずだ。私は露出度の高いメイド服など邪道だと、酒の場で散々こぼしてきたのだし。
あ、強調するが、決して嫌いなわけではないぞ。ホモの疑惑を持たれては迷惑なのではっきり言っておくが、嫌いなわけではない。過度なエロスが苦手なだけで、慎ましいエロスなら大好物だっ! 私は健全なオッサンだからなっ!
だからハナナちゃんの、「いつもそうだ」とか「エロければ誰でもいいのか」といった罵倒は私には当たらないし、未婚で恋人すらいないフリーの私が「浮気者」扱いされるのもおかしい。
もしかしてハナナちゃん、私の知らない誰かと混同しているんじゃないのか? 例えば……
ハナナちゃんの本当の父親……とか?
「おいおいお父さんよ♪ あんまり娘さんを泣かすもんじゃないぜ?」ヤレヤレ
「え?」
「しょうがないねぇ。女癖も程々にしときなよ♪」ヤレヤレ
「ええっ!?」
突然、見知らぬ人から声をかけられる。
振り返ると、周囲には何人かギャラリーが出来ていた。みんな、しょうがないなってあきれ顔で、かつ楽しそうに私達を見ている。どうやら親子の痴話ゲンカだと思われているようだ。さしずめ私は女癖の悪い父親で、ハナナちゃんは親離れできない娘ってところか。酷い誤解である。
「い、いや、その、私達は…………。お、お騒がせしてすみませんね。ハハハッ」
周囲に誤解を解こうとしたが、時間の無駄だと気付いたので、愛想笑いで誤魔化っした。もういいや、親子で。
とにかく移動しよう。このままではますますギャラリーが増えていくぞ。野薔薇ノ民は暇なのか? それともエンタメ不足で、この手の騒ぎも娯楽になってしまうのか?
私はいじけてうつむいている愛娘に声をかける。ハナナちゃん。おーい。
「わかった。もういい」と言いながら、ハナナちゃんは涙を拭う。え? え? まさか、泣いてたの!?
頭をあげたハナナちゃんは、くわっと目を見開き、気合いの入って声でこう叫んだ。
「アタシも一緒に行くっ!!」
「あの女がちょっかい出さないよう、アタシがオトっつぁんを見張ってる! いいよねリンゴ!」
「ん~、まあ定員数なら慢性的に足りてないし、いいんじゃね? モモカに聞いてみなよ」
「あ、えっと…、ギャラリーの皆さん、お騒がせしました! もう大丈夫ですので」
「なんだい、もう終わりかい」
「喧嘩するほど仲がいいって良いよねぇ」
「はいはい、解散解散」
私達を囲んでいたギャラリーはどんどん去ってゆき、いつもの道なりに戻っていった。
なんだかよく分からないうちに、ハナナちゃんは納得したらしい。私は色々と納得できてないけど…まあいいか。
「ところでハナナちゃん、さっき泣いてた?」
「泣いてねーよ」
「泣いてただろ?」
「泣いてねーったら」
「ハナナちゃんも女の子だもんなぁ」
「だからっ! 泣いてねーっつーの!」
顔を真っ赤にしながら否定するハナナちゃんが無性にかわいかったが、この辺で止めておこう。
はしゃぎすぎるとウデボキーッだし。魔法紙の無駄遣いは控えないとな。




