2-17 使命感
ちなみに昨日うpした2-16で、通算30話達成していました。
……落ち着こうか、私。
ハナナちゃんか、モモカさんか。とにかく私は、二人のどちらかを選択しなければならない。
時間はないが、なるべく多角的に検証してみよう。
まずはハナナちゃんとのデートの重要性を考えてみよう。
私は今朝、リナリアちゃんに「早く帰る」と約束し、指切りげんまんをした。約束を守らねばリナリアちゃんの心を深く傷つけてしまうし、約束を破ればハリセンボン飲まされてしまう。
対してハナナちゃんとのデートは、約束すらしていない。その場の勢いと思いつきで始めたものだ。だったら、その場の勢いと思いつきで終わらせても、明日に延期したとしても、なんら問題無いのではないか? そりゃあハナナちゃんも大人ぶっちゃいるが、16歳の思春期真っ盛り。傷つく事には違いない。だけど、リナリアちゃんに比べれば微々たるものだ。
人道的、道徳的に考えてみると?
言うまでもなく、助けを求めているモモカさんを放っておけるはずがない。ハナナちゃんにはごめんなさいするしかない。
下心的には?
そりゃあ年を食ってもまだまだ男の子ですから、魅力的な女性にお近づきになれるのは嬉しい限りですともさ。
だけど、二人のどちらかを選べと言われたら、正直困ってしまう。方向性こそ違えども、二人とも魅力的だから、現状では選びきれないのだ。だからこそ、今回は下心抜きで考えるしか無い。
好ましいことではないが、敢えて打算的に考えるとどうだろう?
私が冒険者を目指していたならば、ハナナちゃんは最高の相棒となるに違いない。しかし、私が冒険者を目指すには年齢的に厳しいし、何より私は引き籠もり気質なのだ。アウトドアライフやサバイバルは心身共にキツすぎる。
私がオトギ生活を続けるには、斡旋処に仕事を紹介してもらうしかない。だとしたら、受付嬢モモカさんの点数を稼いだ方が圧倒的に良い。たとえ利用されているとしても、私も利用すればいい。ウィンウィンの関係でいられれば十分だ。日頃から頼み事を聞いて貸しを作っておけば、いざという時、無理を聞いてくれるかもしれないし。
考えれば考えるほど、モモカさんに軍配が上がってしまう。しかし、どうしても一点だけ気になることがあった。
ハナナちゃんは絶対何か隠しているのだ。だけど一体何を隠している? その真意を問いたださないことには、結論も出しようがない。
しょうがない。探りを入れてみるか。
「なあハナナちゃん。デートの続きは明日でもいいんじゃないか?」
「ダメッ! ダメったらダメ! 今日じゃなくちゃダメなんだよっ!」
「そりゃまたどうしてよ?」
「アタシがそうしたいからっ!」
「ようするにハナナちゃんは、デートがしたい訳じゃなくて、私を仕事に行かせたくないんだろ?」
「そ、そんなことない! デートはしたいよ? ただ、明日じゃなくて今日したいの!」
心なしか、ハナナちゃんの言葉が子供っぽくなっているような気がする。子供っぽいわがままを言っているような…。
ちょっと切り口を変えてみるか。
「リンゴちゃん、ちょっと仕事について聞いていいかな?」
「うっさい! 話しかけるなヘンタイ!」
だめだった。リンゴン・ベルは、相変わらず取り付く島もない。あくまで私とは口をききたくないようだ。面倒くさいなぁ。
だけどハナナちゃんとは積極的に会話してるよな。だったら余計な口もきいてくれるかな?
「なあハナナちゃん。仕事に行かせたくないのは、私が心配だからなんだろ?」
「……そうだよ」
「えっと、ダンジョン潜りだっけ? そんなに危険な仕事なのか? 私には無理なくらい?」
「うん、そう! オトっつぁんには危険すぎて絶対無理なの!」
そこで早速リンゴン・ベルが、余計な茶々を入れてくる。狙い通り!…というか、予想以上の成果だ。
「え~? 大丈夫っしょ? 身の安全なら帝国の見習い修道女が保証してくれるって♪」
「リンゴは黙ってろ! そのエロエロ修道女が危険だって言ってんのっ! ……あ」
ハナナちゃんは慌てて両手で口を塞ぐ。だけど時すでに遅しである。私がその一言を聞き逃すはずは無かった。
「エロエロ……修道女……だと?」
私の心の中で何かがはじけた。
神の道を歩む清貧の修道女が、エ、エ、エロスだと!? 馬鹿な! ありえん! そんな修道女がいるはず無い! とんでもない風評被害じゃないかっ! けしからん! 実にけしからん! 行かねば! 行ってこの目で確かめねば!
「リンゴ~~~~! 俺は仕事に行くぞ~~~~~!!!」
「うわ~~~~ん! やっちまった~~~~!」
涙目のうっかりハナナちゃんは、頭を抱えながらその場にしゃがみ込むが、もはやどうでもいい。
私は使命感に燃え上がっているのだ。もはや誰にも止めさせないっ!




