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2-4 言葉の壁

おおおうっ、話が全く進まなかったぜっ(><)

 私はハナナちゃんと表口に戻ると、三階建て+屋根裏の洋風建築を見上げる。ざっと見て、高さ×横幅×奥行きは12×10×12メートルくらいかな?

 正面から見ると、一階は左右に大きな窓が2つずつあり、中央に観音開きのドアがある。一階と二階の間には看板があり、横書きで大きく『王国仕事斡旋処』。ご丁寧にルビも振られており、『おうこく つかえごと あっせんどころ』とある。二階から上は特に特長はない。よくある洋風建築である。

 今はドアに鍵がかかっていて中には入れないが、一階は手前の1/4が受付スペース。中の1/4が所員さんのいる窓口スペース。残り1/2が斡旋処を利用する人々の資料が眠る書類置き場になっている。私達利用者が入れるのは受付スペースまで。ただし、許可がもらえれば、向かって右にある階段から二階に上がることが出来る。

 二階は応接室。個人面談用の個室から、10人くらい入れる会議室まで大小様々な部屋がある。

 三階は大会議室で、ぶち抜きの大部屋が一つある。

 屋根裏部屋は住み込みメイドにあてがわれるが、斡旋処にメイドはいないので、倉庫として使われているだろう。


 そして斡旋処の右隣には、公衆トイレがある。斡旋処利用者のために設置されたものだが、実はこれがハナナちゃんがここに野宿する最大の理由らしい。まあ、分からないでもない。清潔なトイレほど安堵する場所はないだろうから。


 ああ、そうだ。

 良い頃合いだと思うから、ここで触れておくことにしよう。知らなくても話は進められるけれども、異世界に来れば必ず起きる問題だしね。


 私は西洋文学が大好きだ。児童文学や名作文学、探偵小説やSF小説。中学時代は図書室に通い詰め、片っ端から読み漁った。それらは私にとって『海外』という名の異世界ファンタジーだった。思えばあの頃から、私は異世界への憧れを胸に秘めていたのかもしれない。

 しかし私は、いわゆる聖地巡礼をしたことがない。海外旅行すらもない。何故か? そんなの決まっている。言葉が通じないからだ。治安が悪い、生水が危険、引き籠もりたいなど、不安要素は他にも沢山ある。だけど何より、言葉が通じないのがキツイ。ホントにキツイ。一番キツイ。超キツイ。


 さて、ここで再びクイズだ。

 異世界オトギワルドに迷い込んだ私は、野薔薇ノ王国の皆々様と、なんら問題無く意思疎通が図れている。

 私はどこの言葉で意思の疎通を?


(1)日本語で

(2)野薔薇ノ王国の公用語で

(3)言葉ではなくテレパシーで

(4)その他



 それでは、答え合わせといきましょう。


 私は日本語しか喋れない。中高時代の英語の授業なんて散々だった。だけど(1)じゃない。

 リナリアちゃんをはじめとした野薔薇ノ民は、もちろん王国の公用語で会話している。だから(2)も違う。

 私はエスパーじゃないから、テレパシーなんて使えるはずもない。つまり(3)でもない。

 つまり、答えは(4)の『その他』なのだ。

 え? その他とはどういう事かって? すなわち。こういう事になる。


 野薔薇ノ王国の公用語は、日本語なのだ。


 正確を期するなら、日本語は日本の公用語ではない。日本人のほとんどが日本語を使っているので、公用語を定める必要がなかったからだ。それは野薔薇ノ王国も同じこと。こちらもほとんどの人が日本語を使っているので、公用語をわざわざ定めてはいなかった。

 だけど何故異世界に日本語が?

 私のいた世界ガングワルドでも、日本以外で使う国はほとんど無いというのに…。

 なのに何故異世界に日本語が?


 オトギワルドとガングワルドを繋げる異次元の扉は、太古の昔より、不定期ながら頻繁に開け閉めを繰り返している。異次元の扉から迷い込んだ異世界人は、その地に止まると、自分の世界の文化を伝え残し広めた。それを数百年にも渡って繰り返すうちに、二つの言語が混ざり合い、やがて共通のものへと進化していったのだそうだ。

 その話にどこまで信憑性があるか分からないが、言葉の壁が全く存在しないのは紛れもない事実。言葉だけでなく、斡旋処の看板や魔法紙の呪文も日本の文字で書かれている。だからこそ、私はこの国に止まれた。もし言葉も文字も分からなければ、私はこの世界から尻尾を巻いて逃げ出しただろう。


 一つだけ注意。この言葉が日本語であると強調してはいけない。王国の人々の心証を悪くしてしまう。野薔薇ノ王国の人にとっては、この言葉は母国語。すなわち、野薔薇語なのだから。

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