1-12 指切り
今回は予約掲載設定機能を試してみました。無事12時に掲載されるかな?
管理人さんにドアを開けてもらい、私達は玄関側の管理人室へ向かう。
初めて管理人室に入れてもらった時は緊張したものだ。女性の部屋に入れてもらった事なんて一度もなかったものだから。しかし、リナリアちゃんと管理人さんが住む部屋を、女性の部屋と呼んでよいものか悩んでしまう。あまりにも殺風景だったから。
ベッドもクローゼットもテーブルや机も、管理人室に元からあったもの。クローゼットには旅行カバンと二人の外出着が一着ずつと、引き出しに下着がいくつか入っているだけ。テーブルには暇がある時に作業できるよう内職セットが広げられている。小物やアクセサリーのたぐいは小箱に入る程度しかない。服を除けば、私物は私よりも少ないのだ。
管理人室に入れてもらうと、私はベッドに直行する。本来一人部屋なのでベッドは一つしかない。いつもは、親子が抱き合うようにして眠っているそうだ。リナリアちゃんが熱を出した時は一人で寝かして、管理人さんは看病しながら椅子に座って眠るらしい。大変だ。
「は〜い。到着しましたよ。お姫様」
ベッドに降ろすと、リナリアちゃんは大人しく潜り込んでくれた。うん。素直な良い子は大好きさ。
「ああそうだった。起こしてくれたお礼しなくちゃいけないね。リナリアちゃん、何か欲しいものはある? 仕事の帰りにでも買ってきてあげるよ。お菓子がいいかな? キャンディ? チョコ? 思い切ってケーキにしようか」
賃金は基本日払いなので、仕事上がりには懐が豊かになる。気持ちも大きくなってしまうので、うっかり無駄遣いをしてしまう危険もはらんでいるが。でも、リナリアちゃんへのお土産は無駄遣いじゃないから。ちょっと奮発しちゃおうかな。
「リナ、なにもいらないよ。だからねオトジくん、はやくかえってきて」
「え?」
「おしごとおわったら、はやくかえってきて」
「……………」
そ、そ、そんなこと言われたら、泣いてしまうやろ〜〜〜〜!!!!!
そうだよ! リナリアちゃんは寂しいんだよ! 病弱で外にも出られず、管理人さんが外出している時は、一人ぼっちでお留守番。オッサンでダメ人間な私でもかまわないってくらい寂しいんだ! ましてや今日のリナリアちゃんは風邪気味だ。出かけてなんていられるか! 私はここに留まらせてもらうっ!
「じゃあもう、今日は仕事休んじゃおうっかな♪」
「それはダメ〜〜!」
「え」
「おしごとは、ちゃ〜んとしなくちゃダメですヨ! たたかわなくちゃゲンジツと」
「あっはい……」
ははは………、幼女に正論で諭されてしまった四十代の春……。
もしかしたらリナリアちゃんは、私なんかよりもはるかに大人なのかもしれないな。
「よし、じゃあ指切りしよう! すぐに帰るって約束するよ!」
指切り拳万…。それは指と指をからめて行なう、命がけの誓いの儀式だ。
約束を破った者は、指を切られ、万の拳を喰らわされ、針を千本飲まされ、そして死に至るという。
そう! 幼女との約束は命よりも重いのだ! 少なくとも私にとってはなっ!
仕事仲間との飲みニケーションも大事だが、誘われても絶対お断りするぞ!




