#ハインツ1
ハインツの胡乱げな視界に入ったのは、亜麻色の長い髪の女性と、ボサボサの髪の白衣の男性だった。内容はわからないが、なにか話しているようだ。意識は朦朧としており、今にも消え入りそうだった。
白衣の男が、亜麻色の髪の女性に向かって言う。
「怪我は酷いが、命に別状はないですね。少なくとも、彼の方はですが」
「パイロットとしての職務に影響は残るのでしょうか?」
「快復はしますよ。ただ、長い目で見て欲しいところですね。リハビリも必要でしょう」
「問題はあくまで身体ですか」
「それはわからない。目覚めた彼がなにを思うかは、その後の診断で判断することになる。PTSDを発症していないとは断言できない」
「パイロット以外の職務についてはどう思いますか?」
「身体に負荷が掛からないのなら、ありえるでしょう。ただ、やはりリハビリは必要ですね」
「なるほど」
「参考までに、彼の処遇はどうするおつもりで?」
「考えていることはありますが、基本的に本人の希望を尊重します。治療に専念してもいいでしょう」
「それを聞いて安心しました。ところで、彼とはお知り合いで?」
「司令官として、全隊員のことを把握しています」
「いや、それはあなただけでしょうね」
白衣の男性が苦笑がちに言ったところで、ハインツの頼りない意識は奥底に引き込まれるように消えていった。




