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イノセント・スカイ  作者: もちもちな魔族
Part1

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4/38

#カイ2

 敵戦闘機はウィーズルが五機だ。強化型かは現時点では不明。


 機体数は同じ。勝てるかどうかは、やってみないとわからない。


「カイ、強化型だったらどうする?」


 アイカが言う。不安は感じられない、任務中のアイカの態度だった。


「強化型でも撤退するわけにはいかないな。そもそも見ただけじゃ区別できない」


「それもそうだね」


 頷くアイカの反応を確認し、カイは方針を定めた。


「パターンAだ。つまり、いつも通りやろう。一応、強化型である可能性も忘れるなよ」


 そう、いつも通りやればいいのだ。


 基本的にはシグルドは性能面でウィーズルを上回る。真っ当に戦えば、勝てない相手では決してない。


 カイは自らの確かな鼓動を感じていた。身体中を巡るアドレナリンを感じた。


 戦場にいることの手応え。命のやり取りを行うことの、刺激的な危険。


 無意識に操縦桿を握る手に力が入った。


「よし、じゃあ作戦開始だ!」


「「「「了解!」」」」


 カイの呼びかけに応じ、五機のシグルドがフォーメーションを取る。ウィーズルに向かい速度を上げながら、カイとショウ、アイカとエレナに分かれた。マリナは単機で二組の間を航行している。


 パイロットであれば、シグルドの基本性能は何度も叩き込まれる。武装は頻繁に変わらないのだ。


 この時代での戦闘機同士のドッグファイトにおける主力武装は、追尾レーザー砲だ。多少、狙いを外したところで敵戦闘機を追尾するのが好まれている最大の理由だ。


 同時に、同じエレルギーを利用したエナジーバリアによって機体は守られている。これはドッグファイトを長時間化させた原因だ。つまり、レーザー砲が当たってもバリアに阻まれ、なかなか機体本体にダメージを与えられないのである。


 加えて、バルカン砲と多弾頭ミサイルを備えているが、後者は強力である一方、使いどころが難しいので積極的な使用は推奨されていない。


 五機のウィーズルもカイたちの存在を察知したらしい。五機対五機の戦闘機が、向かい合いながら交戦に入る。


「マリナ、頼む!」


「任せて!」


 マリナのシグルドは、超長距離攻撃が可能なように調整されている。容赦なく発射されたレーザー砲が、先行するウィーズルを攻撃する。


 相手方も予期していなかった攻撃だったのか、隊列が乱れた。マリナ機を避けるように、敵ウィーズル部隊は二手に分かれて攻撃体制に移行した。


「ショウ、付いてこいよ!」


「わかってるが、少しは加減しろよ!」


 加速を最大化させ、カイ機が目の前のウィーズル三機に向かう。ウィーズルは三機同時でレーザー砲を容赦なく浴びせてくるが、カイ機はどれも紙一重で避けきった。


 追撃を重ねるウィーズル三機のうち一機に狙いを定め、カイ機が攻撃を開始する。ショウ機はカイ機による攻撃が手薄になった部分を補い、カイ機を敵攻撃から守るように行動した。


 カイ機が攻撃の主体となりショウ機が援護する形が、第31部隊の戦術の要だった。


 ショウがカイに呼び掛ける。


「おい、そろそろいいだろう」


「オーケー。じゃあマリナ、次に移るぞ」


「うん!」


 現状の戦況は、カイ機とショウ機が三体のウィーズルとドッグファイト中であり、マリナ機が少し離れたところから長距離攻撃でカイとショウを援護している。さらに離れたところで、アイカ機とエレナ機がカイたちと同様の戦術でドッグファイトの最中だった。


「アイカちゃんとエレナちゃん、待っててね!」


 マリナ機はそのセリフと裏腹に、戦闘空域から離れるように速度を上げた。代わりにアイカ機とエレナ機に向かったのは、カイとショウの機体だった。


 カイとショウの二機を追うように、ウィーズル三機も加速を始める。しかし、間に合わなかった。


 カイ、ショウ、アイカ、エレナの四機が、二機のウィーズルとのドッグファイトに移行した。遠方からはマリナ機が長距離からのレーザー攻撃を行う。実質、五対二の状況下では防戦も叶わずに、バリアの出力が明らかに下がっていった。二機が撃墜されたのは、ほぼ同時だ。


 残った三機のウィーズルは躊躇うことなく、孤立するマリナ機に向かった。


「ぎゃあああ、助けてくださいカイくん!!!」


「わかってるって。いつものことだろう!」


 長距離攻撃に特化したマリナ機はドッグファイトには向いていない。近づかれると相当に不利なのだ。


 だが、現状は五対三だ。単純な数の勢力では、すでに第31部隊が上回っていた。


 そして、マリナ機よりもずっと三機のウィーズルに近いのは、カイたち四機のシグルドだった。


 カイは無線越しにマリナに呼び掛ける。


「マリナ、いつも言ってるが落ち着け。こちらに合流しつつ、落ち着いて狙いを定めろ」


「いつもいつも言ってますが、囮みたいに使わないでくださいよ〜」


「いつもいつもいつも言ってるが、この戦術だとそうなるんだから仕方がないろう」


「ひぃいいいいんんん!!!」


 マリナは泣き言を漏らしながら、シグルドを加速させて味方との合流を目指しつつ、狙いを定める。発射されたレーザー砲が幾度となく、的確にウィーズル三機を追尾し攻撃し続けた。


 四機のシグルドが、三機のウィーズルとドッグファイトに移行する。


 シグルドが放つレーザー砲が、着実にウィーズルのバリアを削いでいった。増援のない状況下で、勢力が劣った側が防戦に徹するようになると時間稼ぎにもならない。攻撃もままならなかったウィーズルは一機、また一機と撃墜され、最後の一機となった。


 八方から放たれた五機のシグルドのレーザー砲によって、最後のウィーズルを大破させた。

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