#ハインツ11
「これは、可能性の話なのですが――」
司令官の執務室でハインツを前に、ミア司令官が続ける。
「敵戦闘機の性能の飛躍的向上は、おそらく前兆のようなものでしょう」
「前兆、ですか」
「ええ、確証こそありませんが、私は事実をそのように受け取っています」
ミア司令官の言わんとするところは、ハインツには想像できなかった。これから、なにを説明されるのだろうか。怖くもあったが、聞かないではいられなかった。
「設計思想を根本から見直し、新しい戦略と戦術を持って、私たちの目の前に現れるの待っているしかないのかと」
「敵の新型機が、ということですか?」
「そういうことです」
――新型戦闘機。
空戦を中心とするこの時代の戦闘においては、新しい戦闘機の登場は勝敗をそのまま決定づけることさえある。
ミア司令官が想像するのは、戦場の革新的な変化なのだろう。敵勢力は、新型戦闘機をもって戦場の在り方を変えるつもりなのだと。
「それほど未来の話ではないと思いますね。近い将来、もしかしたらすぐに訪れる可能性なのかもしれません。ですが、可能性のままで終わることはないでしょう。私たちは、明確な脅威を目の前にしているのです」
これからも戦場が変わる。強化型ウィーズルだけでは済まない、敵の考えを知りたかった。
ハインツの身体はわずかに震えた。今はもう、パイロットですらないのに、これからの戦争を想像して、なにも言えなくなった。
「とは言え、ハインツ副官。あなたには覚えていて欲しいのです」
「なにをでしょうか?」
「私は、勝てない戦争をしているつもりはありません。――私の役割は、エデンの勝利をこの手に掴むことなのですから」
ミア司令官のその言葉にも、ハインツはなんと言ったらいいのか判断できなかった。厳しくなる戦況には不安でしかない。だが、ミアの言う通り希望はあるのだ。自ら手放すことはないのである。
不確定な未来から生じたわずかな希望を大事にしようと、ハインツは自分に言い聞かせていた。




