↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イノセント・スカイ  作者: もちもちな魔族
Part3

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/38

#アイカ7

 結局、アイカはカイに続いて、テラフォーミング施設の奥に歩みを進めていた。


 どうしてこうなったのか疑問ではあったが、カイの気まぐれが原因なのは間違いなかった。アイカとて、強くは反対しなかった。やることが他にないのは確かだし、安全を確認するためにも必要だとは思ったのだ。


 薄暗い室内を歩くのは、あまり気持ちのいいことではなかった。まして、馴染みのない場所なのだ。アイカも警戒心を解けないでいた。


「エデンではなかなかお目にかかれない光景だな」


「そうだね」


 カイの感想に、アイカも同意だった。


「施設内のデータはないの?」


「あるぞ。ただ、施設の間取りくらいしかわからないけどな」


 どこになにがあるのかは不明らしい。


「カイ、今更だけど、あまり奥には行かないようにしよう」


「なんでだよ」


 不満そうなカイに、アイカはうんざりしながらも説明する。


「なにがあるのかわからないだろう?」


「ただのテラフォーミング施設だって。大したものはないだろう」


「大したものがないってわかってるなら、探索する必要ないじゃないか」


「それもそうだな。だけど、この場所の安全性に確信を持ちたいしなあ」


 カイの反論に、アイカも言い返せなかった。珍しく正論ではあったのだ。ここがアイカたちにとって未知の施設であることに変わりはない。


「テラフォーミング施設って、なんのためにあるんだろう?」


 アイカの疑問に、カイは自信満々で答えた。


「そりゃあ、テラフォーミングのためだろう」


「それくらい、わかってるよ。テラフォーミングして、どうするのかって話だ」


 今は戦争中だ。そもそも、テラフォーミング施設など建設する余裕などないはずだ。地表の毒ガスのせいで、人類は空中都市を建設し、空に逃げることになった。現在の戦争が戦闘機による空戦を中心としているのは、そのせいでもあった。逆に言えば、毒ガスは地表での戦争を防いでいる意味合いもあったのだが。


「だいぶ昔の施設らしいからな、今はもう深い意味はないだろう」


「あ、でも、テラフォーミングって、この星に人類が住めるようにするための施設だよな。だったら、もう役目は終えているのか」


「いや、これは毒ガスを無毒化するための施設らしい。つまりは、戦争が始まってから建設されたんだ」


 惑星アリシアにおけるテラフォーミングの必要性は、二度生じたのだ。人類が移住したばかりのときと、戦争によって毒ガスが地表に蔓延した後だ。この施設は後者に対応するためのものらしい。


 今までの話からすると、エデン側が建設したものらしい。意図は不明だが、決して悪いことではないとアイカは思った。


「地表を普通に歩けたら、今より人類は豊かになるのかな」


「俺は今でも満足してるから、どっちでもいいけどな」


「あんたはそう言うだろうね」


「だけど、地表でまで戦争するのはうんざりだな。俺は戦闘機に乗っていたい」


「……それは、私もそう思うけど」


 ただ、テラフォーミング自体には希望を感じていた。地表を再び人類の生活圏にできるなら、それ自体が素晴らしいことのようにも思える。ただ、それも戦争がなければの話だ。地表でまで戦争が広がると、カイの言う通り泥沼化しそうだった。戦闘機での戦争に終始している現状は、その意味ではシンプルなのだ。


 そうこう話しているうちに、曲がり角に突き当たった。


「うお!?」


「どうした、カイ!」


 カイの驚く様子に、アイカもつられて驚くが、理由はすぐにわかった。


「う、うわ!」


 アイカは、その原因を見た。人影だった。だが、人ではなかった。


「ま、マネキン? いや、アンドロイドか」


 その人型は、兵士を模していた。アイカは早くなった鼓動を抑えようと息を吸った。


「警備用の機械兵士だな。なかなか、かっこいいじゃないか」


 最初に驚いたカイは、もうその存在に適応していた。すでに機械兵士のボディをベタベタと触りだしている。


「カイ、やめときなよ」


「いいだろうが。かっこいいんだし」


「理由になってないから。男って、こういうの好きだよね」


「地球時代からそうだったらしいな。たぶん、不治の病だ」


 アイカはカイの台詞には呆れていたが、まあ、かっこいいという感想もわからないではないのだが。


 途端に、警報音が鳴り響いた。


「――え、」


「――お、おう?」


 顔を見合わせて動揺するアイカとカイだったが、すぐに我に返った。


「あ、あれ。もしかして、警備システムが反応したのか?」


 上ずった声には、カイの焦りが感じられた。


「シンニュウシャヲ、ハッケン。タダチニハイジョスル」


 カイが触っていた機械兵士の目が赤色に光った。カイは慌てて、手を引っ込めた。


 ドン、ドン、ドンと奥からなにかの音が聞こえてきた。重い足音だった。


 奥から現れたのは、数え切れない数の機械兵士たちだった。


「おおおおおいい、あれなんだ、あの数の機械兵士たちは!」


「し、知らないよ! カイがベタベタ触るから怒ったんじゃない!」


「俺のせいかよ!?」


「明らかにそうだろう!!」


 言い合っている場合ではないのは二人も理解していたが、喋らずにはいられなかった。一頻り罵りあった後、カイが言った。


「とにかく、逃げるぞ!」


「う、うん!」


 全速力で、逃げ始めるアイカとカイ。


 とにかく、入口まで戻ろうと阿吽の呼吸で走る。ひたすら走った。幸い、機械兵士たちは武器を持っていないようだった。重いボディが、重い足音を立てながら迫ってくる。


 無我夢中で走った。薄暗い室内とか、見知らぬ場所であるとか、気にしている場合ではなかった。


 こんなところで殺されるのはまっぴらだった。


 そしてやっと、入口まで辿り着いた。だが、後ろを振り返ると機械兵士たちがすでに迫っていた。


「おい、アイカ。ガスマスク忘れるなよ!」


「わかってる!」


 二人の間に、それ以上の会話はなかった。施設から逃げ出すことには一致していた。走れ、走れ、とにかく走れ、とアイカは自分に言い聞かせていた。


 扉が開いて、明かりが入った。


 毒ガスの中を進むのには抵抗があるが、そんなことを言っている場合ではない。息を呑んで、覚悟を決める。


「あ、あれ、なんだ」


 目の前の光景に呆然とした。


 なにかが空から落ちて来る。


 カイと並んだまま、アイカは空を見つめて絶句していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。