#カイ11
カイたち第31部隊の機体がフェリックスから発進してすぐに、敵勢力のウィーズルが確認された。報告通り、機体数が格段に多い。だが、そのために救世軍側も大部隊を迎撃に向かわせたのだ。カイたちにとっても想定内だった。
お互いのレーダーに反応したのは、ほぼ同時だったらしい。こちらが交戦体制に移行したのとほぼ同時に、敵ウィーズルもこちらに向かってくる。
「で、今回はどうするんだ?」
今回の任務の指揮担当は、マリナだった。カイもマリナの指揮は嫌いではない。自分ほどではないが、カイの機体を活かしてくれるからだ。
「私の指揮ですよ? パターンBに決まってるじゃないですか」
「好きだねえ」
カイも苦笑していた。指揮担当者は誰だって、自分がやりやすい戦術を取りたがる。
「カイくんも嫌いじゃないくせに〜」
「まあな。でも俺は、戦えれば戦術はなんでもいいんだけどな」
「はいはい。相変わらず、頭おかしい発想ですね〜」
無線の向こうでは、マリナが呆れているのだろう。だが、いつもよりは楽しそうな印象を受けた。
「マリナ、一応作戦を説明して」
アイカの注意に、「そうですね」とマリナも頷いた気がした。
「では、作戦を説明します。今回は敵部隊も複数あるみたいですが、戦術AIが私たちの部隊に割り振った敵部隊を中心に攻撃します。あとはパターンBです。他に向かってくる機体も攻撃対象にします。早期に殲滅できたら、味方部隊の応援に行きます。――以上です!」
「「「「了解!」」」」
それを合図に、カイたちの機体はフォーメーションを組んだ。まずは、カイ機とショウ機が先行する。カイたちのかなり後ろで待機しているマリナ機との、中間よりややマリナ機よりに、アイカ機とエレナ機が航行している。
「敵戦闘機、射程範囲に入りました。撃ちます!」
マリナ機の超長距離砲が容赦なく火を吹いた。まとまって航行していた敵戦闘機五機が、一方的にマリナのシグルドによる攻撃を受け続ける。大抵は射程範囲外の攻撃を嫌がる。さして待つまでもなく、敵戦闘機部隊は二機と三機の二手に別れた。
「カイくんとショウくん、今です!」
「おう、任せろ!」
「よっしゃ。気合い入れてやるか!」
カイはショウの声を聞いて、神経を研ぎ澄ませた。そして、二機でまとまっている敵戦闘機に向かってシグルドを加速させた。
まずは、一機目に狙いを定める。カイ機が敵機体を攻撃する。そして、応じるようにカイ機も攻撃を受けた。エナジーバリアがレーザー攻撃を弾く衝撃を感じたが、構わずに攻撃をしては、敵機による攻撃を躱す。マリナ機の超長距離攻撃と、ショウ機による短中距離攻撃による援護を受けながら、カイ機は敵機とのドッグファイトに移行した。
カイの頭上が、クリーム色の空になったり赤い大地になったりと、上に下にとを繰り返していた。敵機との激しいドッグファイトは、機体の位置を何度も変えながらしばらく続いた。
「カイ、そっち行ってるぞ!」
「おう!」
アイカの掛け声に、カイも頷いた。さきほどマリナの超長距離攻撃を避けて別れたばかりの敵戦闘機三機が、味方の援護に向かっているのを肉眼でも確認した。
「アイカちゃん、エレナちゃん、すぐに向かってください!」
「わかった!」
「おーけー!」
マリナの指示に従い、アイカたち二機がカイ機とショウ機の援護に向かう。カイ機も援護を受けるべく、アイカたちの方に向かった。
戦闘中に生じたほんのわずかな静寂の後で、味方四機と敵機体五機の混戦になった。複数機体による、近距離でのドッグファイトが始まったのだ。遠くに配置するマリナ機だけが、射程圏外から淡々と狙いを定めては攻撃を続けている。
カイ機とマリナ機の集中攻撃を受けていた敵機体が、撃墜された。敵部隊は、マリナ機の攻撃を疎ましく思ったのか、攻撃対象をあからさまに変えた。
マリナ機に向かって、残り四機の敵戦闘機が加速した。だが、背後を取ったカイたち四機が攻撃をさらに強める。マリナ機による長距離攻撃と、背後からの攻撃で、敵機体が一機、また一機と撃墜されていった。




