#カイ8
カイたちはアリサを連れてシオ医官に会いに病院まで行ったのだが、診察中だったため、しばらく待たされた。やっと診察が一段落したのか、三人はシオ医官がいる診察室に通された。
「やあ、カイ君以外は久しぶりだね」
「なあ、シオ医官。この子をどうにかしてくれ」
挨拶をするまでもなく、カイは要件だけを伝えた。
「この子って?」
惚けるでもなく、シオは訝しんでいた。
「目の前にいるだろう」
とカイは言いつつ振り返ったが、アリサの姿はどこにもなかった。
「あいつ、どこに消えた?」
アイカとマリナも一緒になって、視界に入るあちこちを探したが、アリサは影も形も見えなかった。
「ありゃ、逃げちゃったんですかね」
「病院って、幼い子には印象悪いもんね」
「いや、そういう問題かよ?」
「酷い言われようだなあ」
三者三様、いや四者四様の反応を示して、困惑がまた彼らのところにやって来た。
「シオ医官、確かに俺たちは幼い女の子を連れてきたんだ」
「そう言われてもね、実物を連れてきてくれないと反応に困るよ」
カイの主張にも、シオは暖簾に腕押しという態度で接していた。
「以前、幻覚の相談をしたときに言っていたよな。そのことは、シオ医官以外に言っちゃ駄目だけだって」
「確かに言ったけど、だからといって『僕に言え』とは言っていないはずだよ」
「関わりたくないのか?」
「そんなことはないよ。実物がいないと、関わりようがないだけさ」
シオ医官の言い分もわからないではない。だが、なんと不親切な態度なのだろうか。カイの内心を察したのか、シオ医官は少し不機嫌になった。
「あのね、僕は医官なんだ。つまり、医者だよ。エデンの陰謀だとか、都市伝説だとかは扱ってない。憲兵が相手にしてくれないなら、素直に司令部に報告すればいい」
正論ではある。だが、カイたちも深入りはしたくないのである。
「司令部に報告するとしてさ、俺たちになにかマイナスになることはないかな?」
「いや、むしろ、感謝されるんじゃないかな? エデンにはいないはずの幼女だからね、きっとなにか重要な意味があるんだよ。少なくとも、司令部にとってはね」
司令部は、アリサのことを知っているのだろうか。カイはしばし逡巡した。
アリサは一体、何者なのだのだろう? 疑問は解消されないどころか、段々深くなっていくのが微妙に不快だった。
「まあ、でも。どうしても、僕を頼りたいなら一つ条件がある。実物を連れてきてくれればいい。それなら、なにかしらやりようはあるかもね」
「わかったよ」
カイたちはとりあえず、引き返すことにした。その前に念のために、病院内を軽く見回ったが、アリサの姿はどこにも見つけられなかった。
アリサはシオ医官に会う気はないだろうと、カイはどうしてか確信していた。




