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【10章】飛梅伝説
翌朝
再編成された征伐隊が、菅原道真の屋敷へ踏み込んだ。
そして
中庭へ出たところで、兵たちは足を止めた。
「……何だ、あれは」
そこには、巨大な梅の大樹があった。
季節外れの白い花を、枝いっぱいに咲かせている。
しかし
そんな木は、昨日までなかった。
誰も、そんな木を見たことはない。
それなのに
今は、そこにある。
風が吹く。
梅の花が、静かに揺れる。
その根元。
大樹に背を預けるようにして、一人の男が座っていた。
菅原道真。
すでに事切れていた。
その顔には、穏やかな笑みが浮かんでいる。
それは、かつて三人で過ごしていた頃と同じ――
優しい笑みだった。
誰も、何も言わなかった
ただ、満開の梅だけが
静かに風に揺れていた。




