宇宙ヤギュウ一族の野望
その頃、ブリッジでは提督たちが防衛部隊の報告を待っていた。
だが、彼らが目にしたのは、ブリッジの頑丈なチタン合金製のハッチが、内側からの異常な圧力で**メキメキ……メキメキメキ……**と不気味な音を立ててこちら側に膨らんでいく光景だった。
「ひっ、ハッチが変形しているぞ!?」
「何が起きているんだ!?」
限界を迎えたボルトが激音とともに弾け飛び、ハッチが完全に崩壊した。
次の瞬間、ブリッジ内になだれ込んできたのは、大量のパステルピンクの少女たちと、その圧倒的な肉圧によって圧殺された宇宙海兵隊員たちの亡骸だった。なお、海兵隊員の一部は、カグヤたちの密着に包まれたせいか、なぜか恍惚とした非常に幸せそうな顔のまま息絶えていた。
「ハァ、ハァ……狭くて死ぬかと思ったでござる」
折り重なった海兵隊の山から、本物のカグヤが『鬼包丁』を杖代わりに突き立てて立ち上がる。
その背後で、役目を終えた無数の分身たちがポンポンと煙を上げて消えていく。
ブリッジの床に転がる通信将校の死体と、まだ電子メモに「別れとなると……」とブツブツ呟いている航海長を一瞥し、カグヤは冷徹な視線を提督へと向けた。
「さあ、本丸に到着でござる。覚悟はいいでござるか、おでん泥棒共」
【終盤:デストロイスター・メインブリッジ】
「きゃー!来たー!」
「化け物ー! 宇宙忍者だー!」
「誰か大人の男の人を呼んでー! 軍隊を呼んで! あ、俺たちか!?」
崩壊したハッチから立ち上がるカグヤを前に、銀河を統べるエリート軍人たちが鼻水を垂らし裏返った悲鳴を上げる。本物のカグヤは、愛刀『鬼包丁』を肩に担ぎ直して不満げに頬を膨らませた。
「こんなピチピチのくノ一を捕まえて、化け物とはなんたる無礼! 屋台とおでんと師匠の仇討ちに、宇宙クロハバキ衆カグヤ推参! 俳句の書けた者からかかってきなさい!」
その言葉に、部屋の隅で必死に電子メモを叩いていた航海長が、ガタガタと震えながら手を挙げた。
「あの、まだ最後の七、七が上手く出来て無いんで、私は後で――」
「ギャーッ!!」
言い終わる前に、カグヤの『鬼包丁』が一閃した。鈍重な質量が音速を超え、航海長を縦真っ二つに叩き斬る。
カグヤは宙に舞った電子メモパッドを素早くキャッチすると、自身の豊かな胸元へと滑り込ませた。さっきまで航海長だった物へ、神妙な顔で視線を落とす。
「お主の遺言、しかと承った! 黄泉比良坂で会おう!」
そして、カグヤは首だけをグルリと不気味に回して、残された提督と艦長をねめつけた。
「さて、次はどちらから黄泉路へと向かうでござるか? 航海長殿が待っているでござるよ?」
その時、破壊された通路の奥から、地響きのような足音と共に屈強な大男が滑り込んできた。
「待て! 女郎め! 私が相手だ!」
男は身の丈ほどもある漆黒のレーザーソードを抜き放ち、眼光を鋭く光らせる。
「銀河一の剣の使い手、宇宙ヤギュウ一刀斎がお相手仕る! 覚悟!」
「宇宙ヤギュウとは相手にとって不足無し! 参る!」
今、宇宙最強と最狂の決戦の火蓋が切って落とされた




