5.異形
病院。
研究棟研究室。
研究員の手記がある。
『UV-ZOMBIE 保管場所メモ』
手記によると、ワクチンは院内の研究棟地下室にあるようだ。
俺たちは地下へ降りる階段を探す。
研究棟の廊下を進む。
「階段、ないね」
「もしかして、さっきのところ?」
と、聡美が言う。
「そういえば、さっき入らなかった扉があったな」
行ってみるか、と思った俺は聡美と牧田を連れて先ほどの手術室の前に向かった。
扉の前。
その先には、なんの気配も感じなかった。
(どういうことだ?)
そっと扉を開けてみる。
荒れ果ててはいるが、誰もいない手術室だった。
「誰もいませんね」
と、牧田。
「さっき、仲間がいた」
聡美が言った。
なるほど、ゾンビのことであろう。
「今のうちに中を調べましょう」
牧田が手術室を探索する。
「うん?」
牧田が不自然に途切れた床の血痕を見つける。
そこは蓋のようになっていた。
「なんだそれは?」
「手記にあった地下への秘密の通路では?」
「なんで手術室にそんなものがあるんだよ」
牧田が蓋を持ち上げる。
と、地下への階段が現れた。
「行きましょう」
牧田が階段を降りていく。
俺と聡美も後に続く。
「薄暗いな」
俺は懐中電灯を点けた。
階段は長く続いている。
「長いね、階段……」
と、聡美。
長く続く階段を降り、やがて俺たちは階下に到達した。
地下は広い空間になっており、扉がいくつか設置されている。
俺は階段から直線上にある扉に向かって歩く。
なぜなら扉の上に食糧庫とあったからだ。
迷いなく開けると、中に生の肉が少量だが置いてあった。
「肉!」
聡美が駆けってくると、一気に肉に齧り付いた。
ムシャムシャと咀嚼音が聞こえてくる。
そして、肉を平らげた聡美は満足そうな顔をしていた。
「さて……」
俺は薬品室と書かれた扉に移動する。
「ここにワクチンが……」
俺は扉を開けた。
中にゾンビが一体。
「……!?」
こちらを見て驚いている。
俺は拳銃を構えた。
「うー!」
ゾンビが襲いかかってくる。
俺はゾンビの脳天を弾丸で貫いた。
倒れるゾンビ。
俺は薬品室を調べ、ZOMBIE-VACCINEと書かれた箱を見つける。
「ワクチンか?」
箱を開けてみると、アンプルが入っていた。
「目的達成ですね」
「そうみたいだ。後はここから——」
その時、未開の扉の奥から物音がした。
俺は扉の前に移動し、拳銃を手に取る。
そして、ゆっくりと扉を開けて隙間から奥を覗き込んだ。
扉の向こうは薄暗いが電気がついており、一本の細い廊下が続いていた。
「ここにいてくれ」
俺は二人を残して扉を抜け、廊下の先へ歩いていく。
廊下の突き当たりに扉がある。
固唾を飲み、ゆっくりと扉を開けた。
その先には人ではない異形が立っていた。
異形は鉄パイプを持っている。
周囲には命を落としたゾンビたちの死骸。
異形はこちらに気づいて振り返る。
「ぐぐぐ……」
異形が鉄パイプを振りかぶりながら接近してくる。
俺は鉄パイプを拳銃の弾で吹っ飛ばした。
「ぐおおおお!」
異形が雄叫びを上げながら駆け寄ってくる。
俺は異形のウェスタンラリアートをかわし、背後に回り込み、その体に弾を放った。
「やべ!」
頭を狙ったはずの弾丸は軌道がそれて背中に当たる。
異形の背中から紫色の血液が滲み出てくる。
「うおおおお!」
異形は振り返り、人間を超えた身体力でジャンプして襲いかかってくる。
「うお!」
飛び蹴りを受けた俺の体が後方へ飛ばされ壁に激突する。
「がはっ!」
意識が遠のきそうだった。
「だけどな、寝るのはてめえを倒してからだ!」
俺は異形に弾丸を連射する。
異形は弾丸の衝撃で怯みながら後退する。
「ぐおおおお!」
異形は突進してきた。
「マジかよ!?」
俺が異形の拳をかわすと、そのパンチが壁にめり込んで穴を開けた。
周囲を見渡す俺。
(あれは!)
近くにマグナムが落ちていた。
俺はマグナムを拾い、異形の頭部に向かって引き金を引く。
勢いよく放たれた弾丸が、異形の後頭部を貫いた。
「ぐお! があ!」
異形が倒れて意識を失った。
(それにしても、なぜマグナムが?)
とりあえず使えそうだと思った俺はマグナムをしまって来た道を戻る。
階段のある空間へ出るが、聡美と牧田の姿が見えなかった。
「聡美!? 牧田!?」
どこに言ったのだろう。
俺は病院の中をくまなく捜したが、ついに二人を見つけることはできなかった。
「もう病院から出ているのか?」
俺は病院の外へ出る。
太陽は西に沈みかけ、空は赤く染まっていた。
俺は警察署へ向かい、職員名簿で牧田の電話番号を調べた。
携帯の番号が書いてある。俺はそこに電話をかけた。
「はい」
牧田が応答する。
「斉藤だ。お前たち今どこにいるんだ?」
「警察署の地下下水道に向かってます。ミサイル到達まで時間がありません。追って来てください」
「追ってこいったって」
「地図なら受付に置いてあります。下水道入口でお待ちしてます」
電話が切れる。
俺はエントランスの受付に行き、下水道への地図を入手した。
「全く、勝手に行くなってんだ」
俺は二人の後を追い、下水道入口を目指すのであった。




