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11.誘拐

 その日、俺が制圧した三郷西警察署が、ハンターによって壊滅させられた。

 ハンター勢力のゾンビが三郷で大量発生し、三郷西警察署内のゾンビをあっという間に抑え込んだのである。

 その報せを牧田が持ってきた時はとても信じられなかった。

「牧田、それは本当なのか?」

「ええ。たったの数時間で全滅ですよ。私の配下も十数体ほど向かわせたのですが、全く歯が立たず」

「そんなに強いのか、ハンター勢力って?」

「HUNTER-ZOMBIEという名ってだけあって、UV-ZOMBIEを抹消させようとしてますからね」

「一度お目にかかってみたいところだな」

 そこへ聡美がやってくる。

「来てたのね、アンゼロット」

「姉さん、奴らが動き始めたわ」

「そう……」

 元気がなさそうな聡美だった。

「どうしたんだ? 元気がないぞ」

「実は……」

 聡美がスマホの画面を見せてくる。

『ゾンビ星人夫婦よ。貴様らの娘、翔子は預かった。この星から出ていくと約束すれば娘は返してやる。但し、今後も人類のゾンビ化を続けるようであれば、娘の命はない』

「誘拐……だと?」

「どうすればいい……?」

「聡美はご主人様なんだ。聡美が決めてくれ」

 あれ?

 今、なんでご主人様と呼んだんだ。

 いや、聡美はご主人様だ。

 それは紛れも無い事実のはずだ。

 なのに、なぜか違和感を覚える。

「牧田、協力してくれ。娘を救出したい」

「わかりました」

 俺と牧田は作戦を考えた。



 三郷西警察署の前はゾンビで溢れかえっている。

 こちらの気配に気づいたゾンビどもが接近してくる。

 どうやら奴らはHUNTER-ZOMBIEで生産された伏兵のようだ。

 ここまで来て逃げるわけにもいかない。

 俺は拳銃を取り出し、ゾンビに向かって構える。

「とりあえずこいつら一掃するか。このままでは署内に入れないからな」

 俺は迫り来るゾンビどもを無限弾倉技術を搭載したマグナムでその頭部を次々に吹っ飛ばす。

 司令塔を失ったゾンビどもの胴体は、動きを止めて倒れていく。

「これで終わりだ!」

 俺は最後のゾンビを撃ち倒し、警察署への道を確保した。

 俺は警察署に向かって歩き出す。

 牧田、もといアンゼロット様とは先ほど別行動を取った。

 警察署の正門を開け、中へと入る。

 署内のゾンビの気配のなさが、逆に不気味さを醸し出していた。

 俺は警戒心を強め、翔子が囚われている留置場へ向かう。

 その途中でのことだった。

 先日、病院の地下室で戦った異形が、俺が今いる屋内駐車場に現れたのだ。

「お前なんなんだよ!?」

 異形は俺の問いには何も答えずに襲いかかってくる。

 俺は異形のウェスタンラリアートをダックしてかわし、敵が次の攻撃体制に移るまでの一瞬の隙をついて距離を取る。

 マグナムを構え、引き金を引く準備をする俺だったが。

 異形がロケットランチャーを取り出した。

「ちょちょちょ! それは聞いてねえよ!」

 異形がロケットランチャーを放った。

「うお!」

 俺は紙一重のところで攻撃をかわすと、異形が次のロケット弾をロケットランチャーに詰め始める。

 今なら……。

 俺はロケットランチャーに次弾を装填中の異形の手を狙い撃ちする。

「ぐお!」

 弾丸の衝撃で異形がロケット弾を落とす。

 すかさず俺はロケット弾をマグナムで狙った。

 ロケット弾は爆発を起こし、巻き込まれた異形が地に伏した。

「ふう……」

 俺はため息を吐く。

 そして、異形に向かって歩き、動かないことを確認した。

 そこへ、アンゼロット様が現れる。

「今、すごい音がしましたけど、大丈夫ですか?」

「ああ、アンゼロット様。大丈夫ですよ」

「……影響が出てるわね」

「なんの?」

「いえ、なんでもないです」

 なんだろう……、この違和感。

 今まで他の人と同じように話していたのに、今では丁寧な口調になっている。

 先ほどの、聡美……いや、ソフィア様に対してもそうだった。

 ただの交際相手だったのに、今ではご主人様と認識してしまっている。

 俺の身にいったい何が起きているのか。

 考えれば考えるほどわからなくなっていく。

 一度、精神科医へかかってみた方がいいのかもしれない。

「それで、アンゼロット様の首尾はどうですか?」

「ハンターはすでに逃走してました」

「そうですか……。とりあえず、翔子の元に行きましょう」

「そうですね」

 俺とアンゼロット様は留置場へ向かう。

 奥で鉄格子の揺れる音がする。

「翔子! 翔子なのか!?」

 俺は音のする方へ走った。

 檻の中に閉じ込められている翔子の姿があった。

 動揺して暴れていた翔子が落ち着きを取り戻し、安心した表情になる。

「お父さん……」

「翔子……。今出してやるからな」

 とはいうものの、俺は鉄格子を閉ざす扉の鍵を持っていなかった。

「お父さん、鍵持ってるの?」

「探してくるよ」

 翔子に向かって言った後、俺はアンゼロット様の方を向いた。

「ここにいてください。鍵を探してきます」

「わかりました」

 俺は二人を残し、留置場の鍵を探しにいった。

 鍵がありそうなのは留置管理課の部屋だろうか。

 俺は留置管理課の前にいた。

 扉を開ける。

「うー」

 中にゾンビが一体。

 管理課のものか。

 そのゾンビが俺に気づいて襲いかかってくる。

 俺は飛び退き、マグナムで頭を吹っ飛ばした。

 倒れるゾンビの胴体を尻目に、俺は部屋の中を調べる。

 部屋の奥。

 窓際の机の引き出しに、留置場の鍵の束が入っていた。

(管理が杜撰ずさんだろ)

 俺は内心ツッコミを入れた。

 鍵を手に取ると、俺は留置場へ戻り、翔子のいる檻の前に立った。

 鍵の束を一本ずつ扉の鍵穴に差し込み回してみる。

 だが、なかなか合う鍵が見つからない。

 そして、最後の一本を鍵穴に差し込み、回してみる。

 カチッと音を立てて鍵は解錠された。

 この鍵はもう必要なさそうだ。

 俺は鍵を放り投げ扉を開けた。

「助けに来てくれてありがとう」

 娘の翔子が俺に抱きつく。

「怖かったろう? もう大丈夫だからな」

 俺は翔子を優しく抱きしめた。


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