神殿へ戻って
神殿へ戻る頃には、日が少し傾いていた。
キヌヤは玄関で靴についた土を払う。
「ただいま戻りました。」
「おう。」
先に戻っていた花組が振り返る。
丹奈が真っ先に駆け寄ってきた。
「おキヌ、おかえり!」
「ただいま。」
「どうだった?」
「第七区画を少し調べてきました。」
「怖かった?」
「それほどでもありませんよ。」
キヌヤが笑う。
すると丹奈が後ろから覗き込む。
「尻尾、無事?」
「……はい。」
「よかった。」
「そこを心配するんですか。」
丹奈は当然のように頷いた。
「大事だから。」
その横で紫陽が静かにキヌヤを見る。
「怪我は?」
「ありません。」
「ならよかった。」
紫陽はそれだけ言って視線を戻した。
玄灯が入ってくる。
「サクヤヒメに報告してくる。」
「はい。」
玄灯が奥へ向かったあと、キヌヤも続こうとする。
しかし。
「おキヌ。」
丹奈が袖をつまんだ。
「何ですか?」
「今日も触っていい?」
キヌヤは少し考える。
「……少しだけですよ。」
丹奈の顔がぱっと明るくなる。
「やった!」
「丹奈、また始まった。」
桜子が呆れたように言う。
紫陽はその様子を見ながら、小さく呟いた。
「……私も。」
「紫陽まで。」
桜子が振り返る。
紫陽は少しだけ目を逸らした。
「……別に。」
「顔に出てるよ。」
キヌヤは困ったように笑った。
神殿に明るい声が響いていた。




