第七区画の記録
昼過ぎ。
花組が庭でそれぞれ過ごしている頃、キヌヤは神殿の奥にある部屋へ呼ばれていた。
机の上には、第七区画の地図が広げられている。
玄灯も同席していた。
サクヤヒメが地図を指す。
「ここ。」
赤い印が付けられた場所。
「この付近で異変が続いているのですね。」
「はい。」
キヌヤが頷く。
「最初に気付いた時より、範囲が少し広がっています。」
玄灯が眉を寄せる。
「少し、とはどの程度じゃ。」
「以前は祠の周辺だけでした。」
キヌヤは地図上を指でなぞる。
「今は、この辺りまで。」
「……花組の訓練場所とは?」
「まだ離れています。」
「ならば、すぐに移す必要はない。」
玄灯がそう言うと、キヌヤも頷いた。
「はい。」
「ただ。」
キヌヤが少し間を置く。
「気になることがあります。」
サクヤヒメが顔を上げる。
「何です。」
「白い花が咲いた場所に。」
「必ず、足跡があるんです。」
玄灯が地図を見る。
「誰の足跡じゃ。」
「分かりません。」
「人間ではない?」
「形だけなら、人間に近いです。」
キヌヤは静かに答える。
「でも。」
「第七区画には、普通の人間は入れません。」
玄灯の表情が変わる。
サクヤヒメはしばらく地図を見つめた。
そして。
「その足跡。」
「今も残っていますか?」
「……はい。」
「案内しなさい。」
キヌヤが頷く。
「分かりました。」
その時。
廊下の向こうから声がした。
「おキヌー!」
キヌヤが振り返る。
丹奈が顔を覗かせていた。
「何をしてるの?」
「少し仕事をしています。」
「そっか。」
丹奈は地図を覗き込む。
「お仕事頑張ってね、おキヌ。」
「ありがとうございます。」
「終わったらまた尻尾触らせて。」
「……まだ触るんですか?」
「触る!」
キヌヤは困ったように笑った。
「分かりました。」
丹奈は満足そうに頷くと、廊下へ戻っていった。
玄灯がその様子を見て呟く。
「…すっかり気に入られたの。」
「みたいですね。」
キヌヤは苦笑した。




