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花の想ひ出  作者: 栖旅アヲ


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8/22

黒花の嵐

「……逃げて」


紫陽の声と同時だった。


骸華の身体が裂けるみたいに膨らむ。


次の瞬間。


黒い花弁が爆発みたいに吹き荒れた。


「っ!!」


視界が真っ黒になる。


花弁。


花弁。


灰色と黒の花弁が嵐みたいに舞う。


「見えなっ……!」


桜子が目を庇う。


その横を、何かが通った。


速い。


「桜子!!」


椿希の叫び。


ガンッ!!


衝撃。


桜子は反射的に細剣を前へ出していた。


でも押し切られる。


足が地面を滑る。


「っ、重……!!」


骸華。


黒い腕が細剣を押している。


近い。


顔が。


顔じゃない何かが。


「離れろ!」


丹奈の大槌が横から叩き込まれる。


骸華が後ろへ飛ぶ。


地面に着地。


その瞬間には、もう別方向へ動いていた。


「はやっ?!」


雪羽がワイヤーを射出する。


白銀の線が空中を走る。


ピン、と張られる。


「柳羽!」


「行く!」


二人の身体が一気に加速した。


しゅるるるるっ!!


空中を滑る。


骸華の頭上。


柳羽が薙刀を振り下ろす。


ザンッ!!


黒い花弁が弾ける。


でも。


「避けっ……!」


紫陽の声。


遅い。


骸華の腕が柳羽へ伸びる。


ガッ!!


「っ!!」


柳羽の身体が吹き飛んだ。


地面を転がる。


雪羽の顔色が変わる。


「柳羽!!」


駆け寄る。


柳羽はすぐ起き上がった。


けれど、腕から赤い花弁が零れていた。


ぽたり。


赤い雪柳の。


黒い地面に落ちる。


「……平気」


柳羽は短く言う。


でも声が少し掠れていた。


「全然平気じゃないでしょ!!!っ…」


雪羽が珍しく強い声を出す。


その時。


後ろから黒い影。


梅依が振り返る。


「っ」


近い。


骸華。


でも、その前に。


ヒュッ!!


水色の矢が飛ぶ。


朝佳。


矢が骸華の肩を貫く。


一瞬動きが止まる。


その隙に梅依が飛び込んだ。


白梅色の鉤爪。


突き刺す。


引き裂く。


黒い花弁が散る。


でも骸華は止まらない。


逆に腕を振る。


「梅依!」


桜子が叫ぶ。


ギリギリで避ける。


でも。


ブツッ。


梅依の袖が裂けた。


赤い花弁がふわりと舞う。


全員の呼吸が止まりかける。


傷。


本当に傷つく。


そして。


赤い梅の花弁が零れる。


遊びじゃない。


その事実が、少しずつ全員へ染み込んでいた。


「下がって」


紫陽が前へ出る。


青紫の鎌を静かに持ち上げる。


骸華が向き直る。


空気が重い。


紫陽だけ、妙に落ち着いていた。


「紫陽?」


桜子が呼ぶ。


返事はない。


紫陽は鎌を横へ払った。


ザァッ!!


青紫の紫陽花の花弁が舞う。


遅れて。


骸華の身体へ、大きな裂傷が走った。


黒い花弁が吹き上がる。


初めて。


骸華がよろめいた。


「え」


椿希が目を見開く。


「効いてる?」


紫陽は静かに骸華を見る。


でも次の瞬間。


骸華の身体が、ぐにゃりと歪んだ。


嫌な音。


黒い腕が増える。


一本。


二本。


三本。


「……は?」


丹奈の声が引きつる。


サクヤヒメが静かに呟いた。


「第二形態ですね。」

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