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花の想ひ出  作者: 栖旅アヲ


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7/22

骸華

空気が変わった。


さっきまでの亡き色とは違う。


ズン、とのしかかるような圧がかかる。


息が詰まる。


骸華はゆっくりこちらを見る。


顔はあった。


でも、目も口もない。


黒い布を人型に縫い合わせたみたいな身体。


その輪郭から、灰色の花弁が絶えず零れている。


「……なに、あれ」


梅依が小さく呟く。


サクヤヒメが静かに答えた。


「亡き色が集まり、形を得た存在です」


「つまり強いやつ?」


丹奈が聞く。


「はい」


「うわ最悪」


椿希が刀を握り直した。


その瞬間。


骸華が消えた。


「え」


速い。


次の瞬間には、桜子の目の前にいた。


「っ!」


細剣を上げる。


ガンッ!!


衝撃。


桜子の身体が後ろへ吹き飛んだ。


地面を滑る。


「桜子!」


椿希が飛び出す。


深紅の刀が走る。


でも。


ガキンッ!!


止められた。


骸華の腕だった。


黒い。


硬い。


「は?!」


椿希の顔が歪む。


今までの亡き色とは感触が違う。


骸華が腕を振る。


椿希が弾き飛ばされた。


「っ、ぁ……!」


空中で体勢を崩す。


そこへ。


白銀のワイヤーが伸びた。


雪羽。


「椿!」


ワイヤーが椿希の腕へ巻きつく。


引く。


しゅるっ!! と身体が引き寄せられる。


その勢いのまま、柳羽が前へ出た。


薙刀が唸る。


ザンッ!!


骸華の肩が裂ける。


黒い花弁が散った。


でも浅い。


「硬っ……!」


柳羽が顔をしかめる。


骸華が腕を振る。


空気が裂ける音。


柳羽が後ろへ飛ぶ。


ギリギリだった。


頬から赤い花弁が一枚、零れる。


全員の動きが止まった。


「……今」


雪羽の声が少し震える。


柳羽本人も頬を触った。


傷。


浅い。


でも。


赤い雪柳の花弁が落ちた。


「怪我すると出るんだ」


朝佳が小さく言う。


骸華が再び動く。


今度は速かった。


「散れ!!」


丹奈が大槌を振り下ろす。


轟音。


地面が砕ける。


でも骸華は、その衝撃の中を突っ切ってきた。


「うそっ」


黒い腕が丹奈へ伸びる。


その瞬間。


黄色い花弁が割り込んだ。


菊音。


鉄扇が骸華の腕を受け流す。


身体を回す。


舞う。


黄色い花弁が円を描く。


遅れて骸華の腕へ無数の裂傷が走った。


黒い花弁が舞う。


「下がって」


菊音が静かに言う。


珍しく声が強かった。


その横。


梅依が低く走る。


白梅色の爪。


地面すれすれ。


一気に懐へ潜り込む。


突き刺す。


ギンッ!!


止められた。


「っ?!」


骸華の手が、鉤爪を掴んでいた。


黒い花弁がぱらぱら落ちる。


近い。


骸華の顔が。


目も口もないのに、“見られてる”感じがした。


「梅依!」


桜子が飛び込む。


桜色の細剣。


一閃。


骸華が後ろへ跳ぶ。


梅依が息を吐いた。


「……ありがと」


「あとでね」


桜子は前を見る。


骸華はまだ立っている。


斬っても。


砕いても。


倒れない。


サクヤヒメが静かに呟いた。


「初戦にしては十分でしょう」


「は?」


椿希が振り返る。


「まさか倒せとか言わないよね?」


サクヤヒメは否定しなかった。


全員の顔が固まる。


その時。


骸華の身体が膨らんだ。


黒い花弁が周囲へ舞い上がる。


嫌な予感がした。


「……逃げて」


紫陽がぽつりと言った。

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