封鎖の理由
翌朝。
「今日から第七区画は立入禁止じゃ。」
玄灯は広間でそう告げた。
「許可なく近付くことも認めん。」
花組は静かに頷く。
「質問があります。」
桜子が手を挙げた。
「どうした。」
「第七区画は管理者の方が担当していたんですよね。」
「うむ。」
「その方を捜さなくていいんですか?」
広間が静まり返る。
玄灯は少しだけ目を閉じた。
「捜す。」
短く答える。
「じゃが。」
「おぬしらの役目ではない。」
「……。」
桜子は何も言わなかった。
「人には役目がある。」
玄灯は続ける。
「おぬしらは花組じゃ。」
「無闇に危険へ踏み込むことは役目ではない。」
その言葉に、紫陽が静かに口を開いた。
「役目を越えるな。」
「その通りじゃ。」
玄灯は頷いた。
「役目を果たせ。」
「それだけで十分じゃ。」
その日の巡回は、第二区画だった。
以前と変わらない森。
変わらない祠。
だが。
全員の意識は以前とは違っていた。
「異常なし。」
朝佳が周囲を見回す。
「こっちも問題なし。」
柳羽が答える。
紫陽は地図へ印を付ける。
その時。
「玄灯。」
菊音が呼び止めた。
「この印。」
地図の端。
第七区画の文字に、黒い線が一本引かれていた。
「封鎖した証じゃ。」
玄灯が答える。
「おぬしらが気にする必要はない。」
「……はい。」
菊音は頷いた。
巡回を終え、神殿へ戻る。
その途中。
雪羽がぽつりと呟く。
「なんかさぁ。」
「気になるよね。」
「うん。」
丹奈も苦笑する。
「『気にするな』って言われるほど気になる〜。」
「行かないよ。」
椿希が言う。
「玄灯が止めた。」
「そうだね。」
桜子も頷いた。
「今は私達の役目をやろう。」
その言葉で話は終わった。
神殿へ戻ると、玄灯は花組を解散させた。
広間には玄灯とサクヤヒメだけが残る。
「封鎖だけでよいのか。」
玄灯が尋ねる。
「ええ。」
サクヤヒメは窓の外を見たまま答えた。
「花組が立ち入る必要はありません。」
「必要になれば。」
「その時に役目を与えます。」
玄灯は黙って聞いていた。
「今はまだ。」
「駒を動かす時ではありません。」
その言葉に感情はなかった。
ただ盤面を見つめるような、冷静な判断だけがあった。
玄灯は静かに息を吐く。
「おぬしらしいの。」
サクヤヒメは何も答えない。
ただ遠く。
封鎖された第七区画の方角へ視線を向けていた。




