白い花
次の日。
花組は再び第六区画へ向かった。
目的は巡回。
そして。
昨日見つけた白い花の確認だった。
「まだあるかな。」
雪羽が歩きながら言う。
「あるかもしれないし、消えてるかもしれない。」
朝佳が答える。
「自然に咲いたなら、それも可能性としてはある。」
「でもサクヤヒメ様があんな反応した。」
菊音が続ける。
「普通の花じゃないんだろうね。」
誰も触れなかった。
ただ。
全員が気にしていた。
やがて。
祠が見えてくる。
「……。」
白い花は。
まだそこにあった。
昨日と同じ場所。
昨日と同じ姿。
しかし。
よく見ると。
昨日とは少し違った。
「増えてる。」
梅依が呟く。
一本だった花の周囲。
小さな芽がいくつも出ている。
「一日で?」
丹奈が驚く。
紫陽はしゃがみ込む。
触れずに観察する。
「成長が早すぎる。」
「普通の植物ではない。」
「じゃあ、どうする?」
柳羽が聞く。
紫陽は少し考える。
「戻って報告するよ。」
「えーまた?」
雪羽が聞く。
「気になるけど。」
「だから。」
紫陽は花を見る。
「勝手に判断しない。」
その言葉に、全員が頷いた。
以前なら。
気になれば近付いていたかもしれない。
でも今は違う。
知らないものに対して、無理に踏み込まない。
それも役目の一つだった。
神殿へ戻る。
報告を聞いたサクヤヒメは、すぐにその場所へ向かった。
花組も少し離れた場所から見守る。
サクヤヒメは白い花の前に立つ。
しばらく何も言わない。
「サクヤヒメ様。」
桜子が声を掛ける。
「これは……?」
「神花です。」
短い返答。
「神花?」
丹奈が聞き返す。
「はい。」
サクヤヒメは花を見る。
「神域に近い場所でのみ生まれる花です。」
「危険なんですか?」
朝佳が尋ねる。
「いいえ。」
サクヤヒメは首を横に振る。
「花そのものに害はありません。」
「ただ。」
少し間を置く。
「これが咲いたということは、神の力の流れが変化しているということです。」
花組は黙る。
「つまり。」
紫陽が言う。
「何かが起きている…?」
「その可能性があります。」
サクヤヒメは頷いた。
「ですが、今はまだ確認できません。」
「なので。」
「監視します。」
その言葉に。
桜子は少し違和感を覚えた。
守る。
ではなく。
監視。
サクヤヒメにとって、この花も。
祠も。
そして花組も。
同じように。
状況を判断する対象なのかもしれない。
「戻りましょう。」
サクヤヒメが言う。
その時。
白い花が。
風もないのに。
一度だけ揺れた。
誰も気付かなかった。
ただ一人。
サクヤヒメだけが。
その変化を見ていた。




