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花の想ひ出  作者: 栖旅アヲ


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異変の報告

翌朝。


花組は第六区画の巡回へ向かっていた。


「今日は私が地図持つ〜。」


雪羽が手を挙げる。


「大丈夫?」


菊音が笑う。


「迷子にならない?」


「失礼。」


雪羽は頬を膨らませる。


「この前ちゃんと覚えたしぃ。」


「半分だけね。」


椿希がすかさず返した。


「半分言うな。」


そんなやり取りをしながら、森の中を進んでいく。


しばらく歩いたところで。


「ねぇ、止まって。」


紫陽が声を掛けた。


全員が足を止める。


「どうした?」


桜子が尋ねる。


紫陽は少し先を指差した。


「祠。」


「何か変。」


全員で近付く。


祠そのものに異常はない。


ひびもない。


札も正常。


しかし。


「花が咲いてるよ。」


梅依が呟く。


祠の根元。


一輪だけ、白い花が咲いていた。


「昨日はなかったね〜」


朝佳が言う。


「この辺りには咲かない種類だ。」


柳羽は静かに花を見る。


「誰かが植えた……とは思えない。」


蓮唯も小さく頷く。


「土も荒れてない。」


「触らない方がいい。」


紫陽が全員を見る。


「報告だけしよ。」


「賛成。」


桜子も頷いた。


誰も花には触れない。


周囲だけ確認し、その場を離れる。


夕方。


神殿へ戻ると、桜子はいつものように報告を始めた。


「第六区画、祠に異常はありませんでした。」


「ただ。」


「根元に白い花が一輪。」


「今まで確認されていない場所に咲いていました。」


サクヤヒメの手が止まる。


ほんの一瞬だけ。


「……白い花。」


「はい。」


「誰も触れていません。」


桜子が答える。


玄灯がサクヤヒメを見る。


サクヤヒメは静かに報告書を閉じた。


「判断は正しいです。」


「その花には今後も触れないでください。」


「理由を聞いてもいいですか?」


朝佳が尋ねる。


「今は説明できません。」


穏やかな返答だった。


「ですが。」


「見つけた場合は、必ず報告してください。」


それだけ告げる。


「分かりました。」


花組は揃って頷いた。


その日の夜。


花組が部屋へ戻ったあと。


広間にはサクヤヒメと玄灯だけが残っていた。


「まさか。」


玄灯が静かに口を開く。


「……ええ。」


サクヤヒメは短く答える。


「まだ一輪です。」


「ですが、始まっています。」


玄灯は腕を組む。


「予定より早いの。」


「えぇ、想定より少し。」


サクヤヒメは窓の外を見る。


表情は変わらない。


焦りもない。


「ならば。」


「こちらも予定を修正するだけです。」


静かな声だった。


しかし。


その一輪の花は。


神にとって決して見過ごせない異変であることだけは、玄灯にも伝わっていた。

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