表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の想ひ出  作者: 栖旅アヲ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/76

神と人間

翌日。


巡回を終えた花組は、神殿へ戻っていた。


いつもなら賑やかな帰り道も、今日はどこか静かだった。


「……。」


雪羽がぼんやり歩く。


「珍しく静かだね。」


椿希が声を掛ける。


「昨日のこと考えてた。」


雪羽は正直に答えた。


「あの赤い印。」


「人間が消えるって。」


丹奈も腕を組む。


「なんかさ。」


「強い敵がいる方がまだ分かりやすい。」


「うん。」


菊音も頷く。


「敵なら倒せるかもしれない。」


「でも。」


「神域だから無理って言われるとさ。」


言葉が続かなかった。


桜子が前を見る。


「私達も人間なんだよね。」


その一言で空気が止まる。


「つまり。」


朝佳が静かに続けた。


「今の私達が入っても同じ。」


「そういうことになる。」


紫陽が短く答えた。


誰も反論できない。


神に選ばれた花組。


それでも。


神にはなれない。


神域には存在すらできない。


その時。


「何を話しているのですか?」


サクヤヒメが歩いてきた。


「サクヤヒメ様。」


桜子が頭を下げる。


「昨日の赤い印のことです。」


「そうですか。」


穏やかに頷く。


「怖くなりました。」


雪羽が言う。


「普通の人が入ったら消えるなんて。」


サクヤヒメは少しだけ考えた。


「怖い。」


その言葉を繰り返す。


「人間にとっては、そうなのでしょう。」


花組は静かに聞く。


「ですが。」


「神域は、人間を拒絶しているわけではありません。」


「え?」


丹奈が首を傾げる。


「人間が存在できないだけです。」


穏やかな声。


責めるような響きはない。


「魚が陸で生きられないように。」


「鳥が水中で暮らせないように。」


「人間は神域で存在できません。」


「ただ、それだけです。」


あまりにも自然に言う。


「じゃあ。」


菊音が恐る恐る尋ねる。


「もし普通の人が迷い込んだら……。」


「消えます。」


サクヤヒメは即答した。


「助けるんですか?」


一瞬。


静寂が流れる。


「間に合うのであれば。」


「外へ出します。」


「間に合わなければ。」


言葉はそこで終わる。


続きを言う必要はなかった。


「ですから。」


サクヤヒメは微笑む。


「皆さんも近付かないでください。」


「今は。」


その「今は」という一言が。


桜子の耳に残った。


玄灯は二人のやり取りを黙って聞いていた。


何も言わない。


けれど。


花組は少しずつ理解し始めていた。


サクヤヒメは優しい。


それは嘘ではない。


だが、


その優しさは、人間が思う優しさとは少し違う。


神として。


世界を保つために接している。


その距離は。


近いようで。


決して埋まるものではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ