次の役目
訓練が終わる頃には、日が傾き始めていた。
「終わったぁ……。」
丹奈がその場へ寝転がる。
「今日は本当に疲れた。」
「毎日言ってる。」
朝佳が呆れたように笑う。
「だって毎日疲れるもん。」
「それはそう。」
雪羽も地面へ座り込んだ。
玄灯は杖をつきながら花組を見る。
「今日はここまでじゃ。」
「珍しく早い。」
椿希が呟く。
「明日もある。」
「やっぱり。」
菊音が苦笑する。
その時だった。
「玄灯さん。」
サクヤヒメが静かに声を掛ける。
「少し。」
玄灯は頷く。
「おぬしらは待っておれ。」
二人は神殿の奥へ歩いていく。
「何だろ。」
梅依が首を傾げる。
「また修行の話じゃない?」
丹奈が言う。
「嫌だなぁ。」
「もう増やさないでほしい。」
雪羽が空を見上げる。
一方。
神殿の奥。
誰もいない回廊で、サクヤヒメが足を止めた。
「何じゃ。」
「予定を少し早めます。」
玄灯の表情は変わらない。
「理由は。」
「祠です。」
短く答える。
「あのような異常は、本来もっと先に起きるはずでした。」
「つまり。」
玄灯が続ける。
「時がずれ始めたか。」
「その可能性があります。」
静寂が流れる。
「花組はまだ未熟じゃ。」
「承知しています。」
サクヤヒメは淡々と言う。
「ですが。」
「予定通り育つとは限りません。」
「ならば。」
「予定を変えるだけです。」
玄灯は小さく息を吐く。
「開華殿か。」
「まだです。」
サクヤヒメは首を横に振る。
「ですが。」
「このまま基礎だけを続ける段階ではありません。」
「次の役目を与えます。」
玄灯は数秒黙る。
「死ぬ者が出るかもしれんぞ。」
「可能性はあります。」
サクヤヒメは即答した。
「ですが。」
「役目を果たせないのであれば、それまでです。」
その言葉に迷いはない。
玄灯もそれ以上は何も言わなかった。
やがて二人は広間へ戻る。
待っていた花組が一斉に顔を上げる。
「話って何だったんですか?」
桜子が尋ねる。
サクヤヒメはいつもの微笑みを浮かべた。
「皆さん。」
「明日から修行の内容を変更します。」
十人がざわつく。
「変更?」
「はい。」
「皆さんには、神殿の外で果たしていただく役目を少しずつ増やします。」
玄灯が杖をつく。
「遊びではない。」
「気を引き締めろ。」
花組はまだ知らない。
この一言で。
修行の日々が、少しずつ終わりへ向かい始めていることを。




