帰還
五つ目の祠は、完全に元の姿を取り戻していた。
ひびは消え。
崩れかけていた石も、まるで最初から何もなかったかのように戻っている。
「本当に直った……。」
雪羽が近付いて確認する。
「触っていいの?」
「やめておけ。」
玄灯が即答した。
「壊したら笑えんぞ。」
「壊さないよ!」
雪羽が慌てて手を引っ込める。
その様子に、何人かが小さく笑った。
張り詰めていた空気が、少しずつ戻っていく。
「皆さん。」
サクヤヒメが花組を見る。
「今日はありがとうございました。」
桜子が首を振る。
「私達だけじゃ無理でした。」
「玄灯がいたから。」
「それに……。」
紫陽が祠を見る。
「何が起きているのか分からないままだったら、もっと危なかった。」
サクヤヒメは頷いた。
「それでも。」
「最初に異変へ気付き、勝手に判断せず戻ってきた。」
「それも大切なことです。」
十人は顔を見合わせる。
戦うことだけが役目ではない。
見極めること。
待つこと。
助けを求めること。
それも必要な力。
玄灯が杖をつく。
「帰るぞ。」
「え、もう?」
丹奈が驚く。
「何か食べたい。」
「おぬしはいつもそれじゃな。」
「大事でしょ。」
「否定はせん。」
珍しく玄灯が少しだけ笑った。
帰り道。
行きとは違って、少しだけ会話が増えた。
「今日の最後の連携。」
椿希が言う。
「前より自然だった気がする。」
「うん。」
桜子も頷く。
「誰が何をするか、考える前に分かった。」
菊音が鉄扇を閉じる。
「最初は自分のことで精一杯だったのにね。」
「今でも精一杯だけど。」
雪羽が言う。
「前よりはマシ。」
「それ自分で言う?」
朝佳が笑う。
少し後ろでは。
柳羽と蓮唯が静かに歩いていた。
「疲れた?」
柳羽が聞く。
「少し。」
蓮唯は答える。
「でも。」
前を歩く八人を見る。
「悪くない。」
柳羽は小さく頷いた。
神殿へ戻る頃には、空は夕暮れになっていた。
門の前で。
サクヤヒメは十人を迎える。
「今日はゆっくり休んでください。」
その言葉に。
全員が少し安心する。
……が。
玄灯が口を開く。
「明日は通常通りじゃ。」
「え?」
十人の声が重なる。
「今日戦ったよね?」
「結界守ったよね?」
「疲れてるよね?」
玄灯は首を傾げる。
「だからじゃ。」
「何が?」
「疲れた状態でも動けるようにする。」
沈黙。
「鬼。」
雪羽が呟く。
「師匠じゃ。」
玄灯はいつものように返した。
そのやり取りを見ていたサクヤヒメは、静かに微笑む。
花組はまだ未熟。
でも。
少しずつ変わっている。
ただ選ばれた十人ではなく。
自分達で支え合う十人へ。
その変化を。
二人は確かに感じていた。




