守るということ
玄灯の言葉が落ちる。
「実戦と思え。」
その瞬間。
花組全員の表情が変わった。
今までの訓練とは違う。
相手はいない。
でも。
守るものがある。
「配置。」
紫陽が周囲を見る。
祠。
サクヤヒメ。
玄灯。
そして十人。
「桜子、中央。」
「分かった。」
「菊音、桜子の補助。」
「任せて。」
「朝佳、高所。」
「見渡せる場所に行く。」
「丹奈、前。」
「了解!」
「椿希、丹奈と合わせて。」
「分かった。」
「梅依、右側。」
「敵が来たら止める。」
「蓮唯、左。」
「うん。」
「雪羽。」
「上だよね。」
紫陽が頷く。
「柳羽、中央の穴埋め。」
「了解。」
全員が動く。
玄灯は何も言わない。
ただ見ている。
少し前なら。
指示を待っていた。
でも今は違う。
自分達で考える。
それを玄灯は見ていた。
サクヤヒメは祠の前に座り、両手を合わせる。
淡い光が少しずつ広がっていく。
その時。
朝佳が顔を上げた。
「……来る。」
全員が反応する。
「数は?」
紫陽が聞く。
「まだ分からない。」
朝佳は目を細める。
「でも、近い。」
風が止まる。
森の奥。
何かが動く気配。
花組全員が武器を構える。
そして。
姿を現した。
亡き色。
一体ではない。
複数。
「来た。」
丹奈が大槌を握る。
「怖いけど。」
桜子が細剣を構える。
「前よりは怖くない。」
椿希が刀を抜く。
「だね。」
雪羽がワイヤーを張る。
「前はただ倒すことしか考えてなかった。」
菊音が鉄扇を開く。
「でも今は違う。」
梅依が鉤爪を構える。
「守る場所がある。」
蓮唯の刃鞭が音を鳴らす。
「なら、やることは決まってる。」
柳羽が薙刀を構える。
「通さない。」
紫陽は亡き色を見る。
「行く。」
一斉に動く。
丹奈が前で受け止める。
椿希が隙を切り込む。
桜子と菊音が中央を守る。
朝佳の矢が遠くの敵の動きを止める。
梅依の鉤爪が近付く影を弾く。
蓮唯の刃鞭が間合いを制限する。
雪羽のワイヤーが動きを縛る。
柳羽の薙刀が抜け道を塞ぐ。
そして。
紫陽が全体を見る。
「右、下がって。」
「桜子、今。」
「朝佳、三秒後。」
短い指示。
迷いはない。
全員が応える。
それは。
玄灯に教えられた動きだった。
一人で勝つためじゃない。
十人で崩さないための動き。
サクヤヒメは祈りを続けながら、静かに目を開けた。
「……変わりましたね。」
玄灯は小さく頷く。
「まだ未熟じゃ。」
「ですが。」
「形にはなってきた。」
花組の十人は戦っている。
でも。
以前のような必死さだけではなかった。
誰かが前に出れば。
誰かが支える。
誰かが危なければ。
誰かが気付く。
戦いながら。
十人は少しずつ。
一つになっていた。




