表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の想ひ出  作者: 栖旅アヲ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
59/72

できること

誰も声を出さなかった。


目の前の祠は、昨日とは別物だった。


一本だったひびは、石全体へ広がっている。


細い線が何本も走り、今にも崩れそうだった。


サクヤヒメは石からそっと手を離す。


「……間違いありません。」


その声には、いつもの穏やかさが少しだけ欠けていた。


「この祠は、結界の力を失っています。」


「直せるんですか?」


桜子が尋ねる。


「今なら。」


短く答える。


しかし、その表情は晴れない。


玄灯が祠の周囲を一周する。


杖で地面を軽く叩きながら、足跡や石の様子を確かめていく。


「壊された形跡はない。」


「はい。」


サクヤヒメも頷く。


「外から干渉されたものではありません。」


「じゃあ、どうして……。」


菊音が小さく呟く。


玄灯は祠の正面で足を止めた。


「寿命じゃ。」


十人が顔を上げる。


「え?」


雪羽が聞き返す。


「寿命……?」


「石にも限界はある。」


玄灯は静かに言う。


「何百年と結界を支え続ければ、いずれ耐えきれなくなる。」


「そんなこと……。」


梅依は祠を見つめた。


「今まで一度もなかったんですか?」


「何度もあった。」


答えたのはサクヤヒメだった。


「その度に、新しい祠へ力を移してきました。」


「じゃあ今回も?」


丹奈が少し安心したように言う。


しかし、サクヤヒメは首を横に振った。


「本来なら、もっと前に兆候が現れます。」


「ですが、この祠は昨日まで何の前触れもありませんでした。」


紫陽が静かに考え込む。


「急に寿命が来た。」


「そういうことですか。」


「……そこが分からないのです。」


サクヤヒメは珍しく迷うような表情を見せた。


沈黙が流れる。


その空気を破ったのは柳羽だった。


「私達に、できることはありますか。」


サクヤヒメは柳羽を見る。


それから花組全員へ視線を向けた。


「あります。」


十人の背筋が伸びる。


「新しい祠へ力を移す間、この場所を守ってください。」


「守る?」


蓮唯が聞く。


「移し替えには少し時間が必要です。」


「その間、私は祠から離れられません。」


玄灯が杖を握り直す。


「わしも手は貸す。」


「じゃが。」


十人を見る。


「今回は、おぬしらが前じゃ。」


桜子は細剣の柄を握る。


椿希も静かに刀へ手を添えた。


朝佳は弓を背負い直す。


丹奈は大槌を肩へ担ぐ。


菊音は鉄扇を開き、梅依は鉤爪をはめる。


紫陽は鎌を持ち上げ、雪羽はワイヤーを指に絡める。


柳羽は薙刀を構え、蓮唯は刃鞭を静かに伸ばした。


玄灯はその様子を見て、小さく頷く。


「訓練は終わりじゃ。」


その一言に、十人の空気が変わる。


「ここから先は。」


杖が地面を鳴らす。


「実戦と思え。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ