再び祠へ
支度を終えた花組は、再び神殿の正門へ集まっていた。
前にはサクヤヒメ。
その隣に玄灯。
そして後ろに花組の十人が並ぶ。
「なんか。」
雪羽が小声で言う。
「今日はいつもより緊張する。」
「玄灯がいるからじゃない?」
椿希が笑う。
「いや、それは毎日。」
「否定できない。」
菊音も苦笑した。
「では、行きましょう。」
サクヤヒメが歩き出す。
今度は昨日より静かな道だった。
誰も無駄話をしない。
歩く音だけが響く。
しばらくして。
丹奈が口を開いた。
「そういえばさ。」
「うん?」
梅依が振り向く。
「札って全部使っちゃったよね。」
「そうだね。」
桜子が頷く。
「今回は持ってない。」
「その必要はありません。」
サクヤヒメが前を向いたまま答える。
「今日は原因を確かめるだけです。」
「なるほど。」
丹奈は納得したように頷いた。
「……原因か。」
蓮唯が小さく呟く。
「分かるといいけど。」
柳羽も静かに続ける。
「何もないのが一番。」
「でも。」
朝佳が山道の先を見る。
「何もないなら、祠は割れない。」
その言葉に、空気が少し重くなる。
「考えすぎても仕方ない。」
紫陽が前を見据えたまま言う。
「見て、確かめる。」
「それだけ。」
全員が頷いた。
雪羽は小さく息を吐く。
「よし。」
「今度は転ばない。」
「昨日のこと気にしてる?」
椿希が笑う。
「気にするよ。」
「丹奈みたいに転がりたくないもん。」
「なんで私!?」
丹奈が抗議する。
「実際転がったし。」
菊音がくすっと笑う。
「……否定できない。」
丹奈は肩を落とした。
そんなやり取りを聞いていた玄灯が、ぼそりと言う。
「少しは肩の力が抜けたようじゃな。」
「え?」
桜子が振り返る。
玄灯はそれ以上何も言わない。
ただ前を歩き続ける。
山道を抜ける。
最初の祠。
二つ目。
三つ目。
四つ目。
昨日と変わらない。
静かなまま。
そして。
五つ目の祠が見えた。
誰も足を止めるように言われていない。
それでも。
自然と全員の歩みが遅くなった。
昨日見た、あの祠。
そこには。
昨日よりも大きく広がったひびが、石の表面を走っていた。
「……広がってる。」
梅依が思わず声を漏らす。
「昨日より明らかに。」
朝佳も表情を曇らせる。
サクヤヒメは祠の前まで歩み寄ると、そっと石へ手を添えた。
その瞬間。
普段穏やかなサクヤヒメの瞳が、わずかに揺れた。
「そんな……。」
初めて聞くような声だった。
玄灯も祠を見つめる。
表情は変わらない。
しかし。
杖を握る手に、ほんの少しだけ力が入った。




