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花の想ひ出  作者: 栖旅アヲ


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遠い場所のこども達

花組が町を離れてから。


町は、少しだけ静かになっていた。


別に何かが壊れたわけではない。


朝になれば店は開く。


畑には人が出る。


子供達は走り回る。


いつも通りの毎日。


けれど。


ふとした瞬間に。


誰かが思い出す。


「あの子達、今頃どうしてるんだろうね。」


市場の端で、年寄り達が話していた。


「サクヤヒメ様のところへ行ったんだろう?」


「そうだろうねぇ。」


「昔から、あの方が選んだ子達は特別だったって話だ。」


老人達はそう言いながらも。


本当のことは何も知らなかった。


どこにいるのか。


何をしているのか。


どんな毎日を過ごしているのか。


ただ。


無事でいてほしい。


それだけだった。


桜子の家。


母親は、いつも通り夕飯の準備をしていた。


十人分の食事を作ることに慣れていたわけではない。


でも。


桜子が友達を連れてくる日は。


いつも賑やかだった。


「桜子は、ちゃんと食べてるかね。」


ふと口に出る。


返事はない。


分かっている。


ここにはいない。


それでも。


癖のように名前を呼んでしまう。


桜子の祖母は、縁側から空を見ていた。


「大きくなったねぇ。」


小さく呟く。


昔はただの子供だった。


町を走り回って。


転んで泣いて。


笑っていた。


そんな子が。


今は町の外へ行っている。


守られる側だった子供が。


何かを背負っている。


その事実だけが。


少し苦しかった。


夜。


町の外れ。


古い蔵の前。


桜子の祖母は一人で立っていた。


しばらく扉を見る。


中にあるものを思い出す。


昔から守ってきたもの。


花組に関する古い巻物。


けれど。


今日は開けなかった。


まだ必要ではない。


そう思った。


「あの子達は。」


祖母は空を見る。


「知らない場所で頑張っているんだろうね。」


風が吹く。


桜の枝が揺れる。


遠く離れた場所で。


今頃、あの子達は何をしているのだろう。


笑っているのか。


泣いているのか。


苦しんでいるのか。


それでも。


帰ってきた時に。


変わらない場所で迎えてあげたい。


町の人々は。


ただそれだけを願っていた。

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