花組の実力
亡き色が消えた。
花畑に静けさが戻る。
誰もすぐには動かなかった。
息だけが荒い。
「はぁ……。」
丹奈がその場へ座り込む。
「訓練のあとに戦闘とか聞いてない……。」
「私も。」
雪羽が木にもたれかかる。
「もう腕上がんない。」
「でも。」
菊音が周りを見る。
「誰も怪我してない。」
その一言で、みんなも周囲を見回した。
擦り傷はある。
服も少し汚れている。
それでも。
大きな怪我をした者は一人もいなかった。
「ほんとだ。」
桜子が呟く。
前に戦った時は。
ただ必死だった。
自分のことで精一杯だった。
でも今回は違う。
「丹奈。」
「ん?」
「さっき助けてくれたよね。」
「あぁ。」
丹奈は笑う。
「反射。」
「助かった。」
「お互い様。」
今度は椿希が口を開く。
「雪羽もありがと。」
「え?」
「上からワイヤー張ってくれたでしょ。」
「あれのおかげで動き止まった。」
雪羽は少し照れくさそうに笑った。
「役に立ってた?」
「立ってた。」
柳羽が静かに頷く。
「すごく。」
「えへへ。」
「蓮唯も。」
朝佳が言う。
「左側、全部止めてくれてた。」
「止めないと抜けられそうだったから。」
「でも助かった。」
「ありがとう。」
蓮唯は少しだけ目を逸らした。
「……どういたしまして。」
玄灯は少し離れた場所から、その様子を見ていた。
何も言わない。
ただ見ている。
すると紫陽が歩いてきた。
「何。」
「何、ではない。」
玄灯が言う。
「さっきの戦い。」
「はい。」
「途中で指示を変えたな。」
紫陽は頷く。
「亡き色が一体右へ回った。」
「最初のままだと抜かれると思った。」
玄灯は小さく頷く。
「見えておったか。」
「なんとなく。」
「なんとなくで十分じゃ。」
短い言葉だった。
それだけで終わる。
玄灯は振り返る。
「今日はこれで終わりじゃ。」
「やっと!」
雪羽が立ち上がる。
「ご飯!」
「食べたい!」
丹奈も続く。
「肉!」
「昨日も肉って言ってたよね。」
朝佳が呆れる。
「肉は毎日食べたい。」
「分かる。」
椿希が頷く。
十人が歩き始める。
その後ろ姿を見ながら、玄灯は一人小さく呟いた。
「一人では勝てん。」
風が吹く。
花びらが舞う。
「じゃが。」
玄灯の視線は花組へ向く。
「十人なら戦える。」
その言葉は。
誰にも聞こえなかった。




