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花の想ひ出  作者: 栖旅アヲ


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まだ終わらない

「老人を舐めるでない。」


玄灯の言葉に、十人が揃って嫌そうな顔をした。


「いや絶対舐めてない。」


雪羽が即答する。


「むしろ過大評価してる。」


「足りん。」


玄灯が言う。


「まだ足りん。」


嫌な予感しかしなかった。


「もう一回じゃ。」


全員が構える。


光は中央。


守るものは変わらない。


「始め。」


今度は誰も玄灯を見なかった。


見るのは光。


守るべきもの。


玄灯が消える。


「右。」


紫陽。


丹奈が動く。


違う。


「上。」


雪羽がワイヤーを張る。


違う。


「後ろ。」


柳羽が振り返る。


その瞬間。


コツン。


全員が固まる。


光。


無傷。


玄灯の杖。


桜子の細剣に止められていた。


「惜しい。」


玄灯が言う。


「今のは良かった。」


桜子が息を吐く。


止めた。


でも守れたわけじゃない。


一歩間違えば終わっていた。


「もう一回。」


また始まる。


今度は左。


次は正面。


次は真上。


次は地面を滑るように。


玄灯は同じ動きを一度もしなかった。


「こんなの予測できるわけないでしょ!」


雪羽が叫ぶ。


「する必要はない。」


玄灯が答える。


「全部止めろ。」


無茶だった。


本当に無茶だった。


「はい次。」


「休憩!」


「却下。」


「鬼。」


「師匠じゃ。」


また始まる。


丹奈が止める。


椿希が止める。


柳羽が止める。


蓮唯が止める。


でも続かない。


誰かが止めても。


その次が来る。


二手目。


三手目。


四手目。


気付けば。


全員の位置がばらばらになっていた。


玄灯が光へ向かう。


誰も間に合わない。


コツン。


負け。


静かになる。


玄灯は杖をついた。


「今のは何が悪かった。」


「私が止められなかった。」


丹奈が言う。


「違う。」


「俺…じゃなくて私が離れたから。」


椿希。


「違う。」


玄灯は首を振る。


「全員前を見すぎじゃ。」


全員が顔を上げる。


「守る戦いは敵を見る戦いではない。」


杖が光を指す。


「守るものを見る戦いじゃ。」


風が吹く。


花が揺れる。


「敵を追うな。」


「ここを離れるな。」


「敵がどれだけ速くても。」


玄灯が光の横に立つ。


「守るものは動かん。」


その言葉で。


紫陽が目を細めた。


「……なるほど。」


玄灯は何も言わない。


「次は円を作る。」


紫陽が言う。


「誰も追わない。」


「来たやつを止める。」


全員が顔を見る。


さっきまでとは違う。


攻める形じゃない。


守る形。


「始め。」


玄灯が消える。


でも今度は誰も追わない。


光の周り。


十人が残る。


「左。」


「上。」


「前。」


短い声が飛ぶ。


玄灯が現れる。


止める。


消える。


また現れる。


止める。


三十秒。


一分。


初めてだった。


光がまだ残っている。


玄灯が少しだけ目を細める。


次の瞬間。


杖が動く。


速い。


今までで一番。


丹奈の横。


柳羽の隙間。


桜子の細剣を弾く。


そして。


コツン。


光に触れる。


負け。


でも。


今度は違った。


誰も悔しそうな顔をしていない。


「一分二十七秒。」


玄灯が言う。


「最初は一秒じゃった。」


沈黙。


「成長しとる。」


短い。


それだけ。


でも。


十人には十分だった。

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