護る戦い
翌日。
花畑に集まった十人の表情は昨日と少し違っていた。
疲れている。
眠い。
足も痛い。
でも。
少しだけ自信があった。
玄灯に一本入れた。
たった一本。
それでも届いた。
確かに届いた。
「今日は何するの?」
雪羽が聞く。
玄灯は杖をつく。
コツン。
「今日は守る訓練じゃ。」
「守る?」
丹奈が首を傾げる。
「倒す訓練じゃないの?」
「倒すだけなら獣でもできる。」
玄灯が言う。
「守ってこその花組じゃ。」
玄灯が杖を振る。
花びらが舞う。
花畑の中央。
小さな光が現れる。
手のひらほどの大きさ。
淡く揺れている。
「これを守れ。」
「敵は?」
椿希が聞く。
玄灯は短く答える。
「わしじゃ。」
全員嫌な顔をした。
「また?」
「またじゃ。」
「条件は簡単。」
玄灯が光を見る。
「この光に杖が触れたらおぬしらの負け。」
「私達が当てたら?」
「勝ち負けはない。」
玄灯は言う。
「今日は守れるかどうかだけじゃ。」
嫌な予感がした。
「始め。」
次の瞬間。
玄灯が消えた。
「えっ──」
気付けば。
光の前。
杖が振り下ろされる。
カン。
桜子の細剣。
間一髪だった。
「反応は悪くない。」
玄灯が言う。
「じゃが遅い。」
丹奈が前へ出る。
大槌。
重い一撃。
避けられる。
椿希。
刀。
流される。
梅依。
鉤爪。
届かない。
雪羽。
ワイヤー。
すり抜けられる。
朝佳の矢。
杖で弾かれる。
蓮唯の刃鞭。
軌道を読まれている。
柳羽の薙刀。
受け流される。
菊音の鉄扇。
風だけが揺れる。
紫陽が指示を飛ばす。
それでも。
届かない。
「左。」
紫陽。
丹奈が動く。
「前。」
椿希。
「上。」
雪羽。
連携。
悪くない。
昨日より遥かに良い。
でも。
玄灯の姿が消える。
次に見えた時には。
もう別の場所にいる。
「速っ──」
雪羽の声。
「違う。」
玄灯が言う。
「おぬしらが遅い。」
気付けば。
光まであと一歩。
桜子が飛び出す。
細剣。
止める。
玄灯が半歩動く。
空振る。
その隙に。
杖。
コツン。
光に触れる。
静寂。
負けた。
全員分かった。
誰も動かない。
玄灯は杖をつく。
「何が足りん。」
誰も答えない。
「連携か?」
違う。
「技術か?」
違う。
玄灯は光を見る。
「覚悟じゃ。」
風が吹く。
花びらが舞う。
「守る戦いはな。」
静かな声。
「誰かが傷付く前提で動いてはならん。」
十人が黙る。
玄灯は続ける。
「おぬしらは避ける。」
「下がる。」
「間に合う位置を探す。」
杖を持ち上げる。
「守る者は違う。」
玄灯が光の前に立つ。
「間に合わないなら割り込む。」
「避けるな。」
「退くな。」
「守れ。」
重い言葉だった。
「もう一回じゃ。」
誰も文句を言わない。
言えなかった。
「次はわしももうちっと真剣にやるとするか。」
「え゛っ?!」
雪羽の声が響く。
玄灯は少しだけ笑う。
「老人を舐めるでない。」
その目だけが。
今までより少しだけ鋭かった。




