相手は師匠
「今日は組み手じゃ。」
朝。
花畑。
全員が嫌そうな顔をした。
「昨日もやった。」
椿希が言う。
「昨日は個人じゃ。」
玄灯が杖をつく。
「今日は十人全員。」
「十対十?」
雪羽が聞く。
「違う。」
玄灯は首を振った。
「十対一じゃ。」
沈黙。
「誰が一なの?」
丹奈が聞く。
玄灯が自分を指差す。
さらに沈黙。
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「いや無理でしょ。」
「無理じゃな。」
「認めるんだ。」
「じゃがやる。」
理不尽だった。
「条件は一つ。」
玄灯が言う。
「わしに一撃入れろ。」
「一回当てれば勝ち。」
「当たらなかったら?」
梅依が聞く。
「昼飯抜き。」
「最悪。」
始まる。
最初に動いたのは椿希。
刀を抜く。
速い。
だが。
コツン。
杖。
それだけ。
気付けば刀の軌道が逸れている。
「軽い。」
玄灯が言う。
次は丹奈。
大槌。
振り下ろす。
当たらない。
いない。
後ろ。
「遅い。」
梅依。
鉤爪。
届かない。
届く直前でいなくなる。
「前しか見ておらん。」
気付けば。
十分。
二十分。
誰も当てられない。
息だけが上がる。
玄灯はほとんど動いていない。
杖を少し動かすだけ。
一歩ずれるだけ。
それだけ。
「何なんだよこのおじいちゃん……」
雪羽が座り込む。
玄灯は答えない。
代わりに。
桜子が言った。
「一人ずつ行くからじゃない?」
全員が止まる。
そうだった。
全員で戦っている。
でも。
やっていることは一人ずつ挑んでいるのと同じ。
玄灯は初めて少し笑った。
「やっと気付いたか。」




