武器の癖
花畑の真ん中。
花組全員が座り込んでいた。
走らされた直後だった。
立っているだけで足が重い。
だが。
玄灯は容赦しなかった。
「立て」
全員が渋々立ち上がる。
「次はそこまで動かんぞ」
少しだけ安心する。
しかし。
「自分の武器を知れ」
その一言で嫌な予感がした。
「桜子」
桜子が前へ出る。
桜色の細剣が現れる。
玄灯は頷いた。
「振れ」
桜子は剣を動かす。
突き。
払い。
返し。
何度も繰り返す。
しばらく見ていた玄灯が言う。
「慎重じゃな」
桜子が顔を上げる。
「悪いことではない」
「じゃが迷いが剣先に出る」
「菊音」
鉄扇が開く。
花弁のような刃が並ぶ。
静かで綺麗な動き。
玄灯は頷く。
「丁寧じゃな」
菊音が少し安心した顔になる。
「丁寧すぎる」
顔がすぐ戻った。
「朝佳」
朝佳は弓を構える。
弦を引く。
矢が光になる。
放つ。
真っ直ぐ飛ぶ。
玄灯は腕を組んだ。
「よく見ておる」
朝佳が少し笑う。
「じゃが考えすぎじゃ」
「やっぱり?」
「丹奈」
大槌が現れる。
重そうな武器。
振り下ろす。
地面が揺れた。
玄灯は即答した。
「力は十分」
「でしょー!」
丹奈が得意げになる。
「じゃが勢いで解決しようとする」
「バレた?」
「見れば分かる」
「梅依」
長い鉤爪が伸びる。
鋭い。
速い。
一気に踏み込む。
玄灯は目を細める。
「前しか見ておらん」
梅依が止まる。
「獲物を見るのは良い」
「周りも見ろ」
「椿希」
刀を抜く。
銀色の刃が光る。
迷いなく振る。
速い。
玄灯は少し見て言った。
「せっかちじゃな」
「えー」
「刀より先に本人が飛び出しとる」
「紫陽」
鎌を構える。
無駄がない。
静かだ。
玄灯は少しだけ頷く。
「冷静じゃ」
紫陽は何も言わない。
「じゃが一人で終わらせようとする」
その言葉にだけ少し反応した。
「雪羽」
ワイヤーを射出する。
木へ。
岩へ。
花畑の上を滑るように移動する。
玄灯は見上げる。
「器用じゃな」
雪羽が着地する。
「褒めてる?」
「半分じゃ」
「半分かぁ」
「柳羽」
薙刀を構える。
流れるような動き。
刃の軌道が綺麗だった。
玄灯は頷く。
「良い」
柳羽が少し驚く。
「本当に?」
「本当じゃ」
一拍置く。
「じゃが綺麗に振ろうとしすぎじゃ」
「うっ」
最後。
「蓮唯」
刃鞭が現れる。
棘の並んだ長い鞭。
しなるたびに空気を裂く。
先端の刃が花弁を散らした。
玄灯はしばらく見ていた。
そして言う。
「危ないのう」
「武器が?」
「おぬしが」
蓮唯が不満そうな顔をする。
「刃鞭は振るだけの武器ではない」
「距離を支配する武器じゃ」
全員が並ぶ。
玄灯は杖をつく。
コツン。
「武器には癖がある」
「人にも癖がある」
風が吹く。
花弁が揺れる。
「武器を使うんじゃない」
「武器と付き合え」
静かな声だった。
そして少しだけ笑う。
「まあ」
「思ったより見込みはある」
「本当?」
雪羽が聞く。
「本当じゃ」
「思ったよりな」
「その一言いらなくない?」
丹奈のツッコミに、
珍しく玄灯は声を出して笑った。




