おつかれさま
景色が揺れた。
黒い花弁が消えていく。
灰色の花弁も風に溶けるように薄れていく。
気付けば。
薄暗かった商店街が少し明るくなっていた。
「終わったんだ」
朝佳が呟く。
サクヤヒメが頷く。
「亡き色の消滅を確認しました」
妙に事務的だった。
「確認しましたって」
丹奈が苦笑する。
「役所みたい」
「そうですか」
「そこ否定しないんだ」
少しだけ笑いが起きる。
だが長くは続かなかった。
戦いは短かった。
それでも疲れていた。
全員息が上がっている。
「思ったより疲れる……」
梅依が鉤爪を消す。
黄色の花弁が舞った。
椿希は大鎌を肩に担いだまま空を見上げる。
「一体だけでこれかぁ」
「今回は小規模です」
サクヤヒメが言う。
全員が固まる。
「え?」
「今なんて?」
雪羽が聞き返した。
「小規模です」
「嘘でしょ」
「本当です」
即答だった。
柳羽が小さくため息を吐く。
「先が思いやられる」
その意見には全員賛成だった。
サクヤヒメが手を上げる。
花びらが舞う。
次の瞬間。
景色が変わった。
見慣れた天界の花畑。
巨大な桜。
静かな空。
戻ってきたらしい。
「帰ってきた」
桜子が呟く。
サクヤヒメは全員を見る。
「今回の任務で分かったことがあります」
「何?」
椿希が聞く。
「皆さんは連携が苦手です」
「うわ」
即座に丹奈が顔をしかめる。
「正論」
「あと勝手に突撃する人がいます」
サクヤヒメの視線。
椿希。
「……」
「……」
「見ないで」
誰かが吹き出した。
「椿希じゃん」
「椿希だね」
「椿希だな」
満場一致だった。
椿希が不服そうな顔をする。
「結果勝ったし」
「結果論です」
サクヤヒメが切り捨てる。
珍しく少しだけ厳しかった。
そのまま家へ戻る。
玄関をくぐる。
靴を脱ぐ。
部屋へ入る。
そこまで来てようやく。
「あー……」
雪羽が床へ倒れた。
「疲れた」
「分かる」
今度は誰も否定しなかった。
戦いは終わった。
でも。
これが最後じゃない。
むしろ最初だ。
それだけは全員分かっていた。




