追跡
二体の亡き色が商店街の奥へ走る。
「待て!」
椿希が先頭を駆ける。
赤い髪飾りが揺れる。
大鎌を構えたまま、一気に距離を詰めた。
だが。
右へ逃げた亡き色が突然消える。
「え?」
椿希が足を止める。
次の瞬間。
背後。
「椿希!」
桜子の声。
振り返る。
黒い影がいた。
いつの間にか回り込まれている。
椿希は咄嗟に大鎌を振る。
がきん。
重い音。
影の腕とぶつかる。
押し負けそうになる。
「っ!」
その時。
黄色い花弁が舞った。
梅依だ。
鉤爪が影の腕を弾く。
黒い花弁が散る。
椿希は後ろへ飛び退いた。
「助かった」
「後で感謝して」
梅依はそう言いながら再び飛び込む。
一方。
もう一体を追っていた柳羽と雪羽。
「左!」
雪羽が叫ぶ。
柳羽がワイヤーを射出する。
糸が建物同士を結ぶ。
柳羽はそのワイヤーへ飛び乗った。
雪羽も続く。
二人は商店街の上を滑るように移動する。
亡き色の前方へ回り込む。
「止まれ!」
止まるわけがない。
雪羽が鉄扇を開く。
鋭い一撃。
亡き色は避ける。
だが。
避けた先に柳羽がいた。
桜色のワイヤーが伸びる。
亡き色の足元をかすめる。
体勢が崩れる。
その隙。
雪羽の鉄扇が肩を打つ。
黒い花弁が舞った。
「本物!」
柳羽が叫ぶ。
その声に全員が反応する。
本物が分かった。
桜子が細剣を握る。
朝佳も。
菊音も。
紫陽も。
一斉に集まる。
亡き色は後退した。
だが逃げ切れない。
包囲されている。
「今!」
紫陽が叫ぶ。
最初に動いたのは桜子だった。
桜色の細剣が閃く。
亡き色が避ける。
その先には椿希。
さらに横には梅依。
逃げ場がない。
連携はまだ完璧じゃない。
でも。
最初に戦った時より遥かに良かった。
亡き色が大きく歪む。
最後の抵抗みたいに。
しかし。
紫陽の鎌がその動きを止める。
青紫色の刃が横薙ぎに走った。
一瞬。
亡き色の動きが止まる。
その隙を逃さない。
桜子が踏み込む。
細剣が真っ直ぐ伸びる。
桜色の花弁が舞う。
黒い影を貫く。
ふわり。
大量の黒い花弁が舞い上がった。
商店街を覆うように。
そして。
亡き色は音もなく崩れた。
残ったのは。
灰色の花弁だけだった。
静寂が戻る。
誰もすぐには喋らない。
数秒後。
「終わった……?」
丹奈が聞く。
サクヤヒメは少し離れた場所で頷いた。
「はい」
その一言で。
全員がようやく息を吐いた。




