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花の想ひ出  作者: 栖旅アヲ


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16/22

戻らずの花

風が吹く。


花びらが石碑の間を流れていく。


誰もすぐには喋れなかった。


「……それって」


朝佳が小さく口を開く。


「死んだってこと?」


直接だった。


でも誰も止めなかった。


サクヤヒメは静かに答える。


「はい」


花びらが舞う。


それだけだった。


丹奈が乾いた笑いを漏らす。


「うわぁ……」


「さらっと言うなぁ……」


椿希も額を押さえる。


桜子は石碑を見ていた。


名前。


知らない花組。


でも確かにここにいた人達。


笑ったりしてたんだろうか。


自分達みたいに。


「全員?」


梅依が聞く。


サクヤヒメは首を横に振った。


「全滅した代もあります」


空気が止まる。


「……はっ?」


雪羽の声が掠れる。


柳羽も黙ったままだった。


全滅。


言葉が重すぎた。


「逆に、ほとんど欠けず戻れた代もあります」


サクヤヒメは続ける。


「その代によって結果は様々です」


「運ゲーじゃん…」


丹奈が呟く。


でも誰も否定できなかった。


紫陽が石碑を見つめる。


「ここに名前ある人達って」


「全員、前の花組?」


「はい」


「……帰れなかった人も?」


サクヤヒメは頷いた。


その瞬間。


桜子の視線が、一番古い石碑に止まる。


文字がほとんど削れている。


でも花の絵だけ残っていた。


「どれくらい前なの」


「最古の記録は、およそ千年前です」


「千……」


朝佳が引く。


「そんな昔から?」


「はい」


サクヤヒメは静かだった。


まるで当たり前みたいに話す。


でも。


桜子は違和感を覚えていた。


「……サクヤヒメってさ」


全員がそっちを見る。


「ずっと見てきたの」


サクヤヒメは少しだけ目を伏せる。


「はい」


短い返事。


風が吹く。


桜が揺れる。


「全員を」


静かな声。


「覚えています」


誰も喋れなかった。


丹奈でさえ黙っていた。


千年。


何代もの花組。


その全員を見てきた。


笑って。


戦って。


傷ついて。


消えていくのを。


ずっと。


サクヤヒメは感情をほとんど見せない。


でも。


その一言だけ妙に重かった。


その時。


椿希が石碑の一つに近づく。


「……これ」


指で文字をなぞる。


花の模様。


その下。


小さく何か彫られていた。


『十人』


椿希が眉をひそめる。


「人数?」


サクヤヒメは頷く。


「その代の花組の人数です」


「じゃあこれ……」


桜子も別の石碑を見る。


『七人』


『三人』


バラバラだった。


そして。


一番新しい石碑。


まだ新しい白い石。


そこには。


何も刻まれていなかった。


全員の視線がそこへ集まる。


静かだった。


嫌なくらい。

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